非常に難易度の高い「都心アクセス事業」
――今はどのようなお仕事を担当しているのですか。
森下さん 都心アクセス関連事業として、名古屋駅周辺などの都市高速の出入り口や渡り線の改築を担当しています。2013年の全線開通により、新規事業を専属で担当する部署がなくなっていたため、都心アクセスのプロジェクトに特化した部署として、2019年4月に立ち上がりました。
いきなり14名体制の室が誕生し、当初は誰に何を担当してもらうか、何から手を着ければ良いのか、全く白紙でした。設立団体からの出向組と公社プロパーの混在チームで、ほとんどが都市高速の新規事業の経験がないという状況でしたが、何とかチーム一丸となり、事業を進めることが出来ています。
室には、計画と工事、設計それぞれのチームがあって、工事計画の協議、特殊設計の検討、ECI発注などを行っています。今年度からは用地担当のチームも加わりました。この7月に先行する新洲崎・黄金が国土交通大臣の整備計画許可がおりたところで、室ができて1年少しで許可をいただけるところまで進捗しました。
非常に難易度の高い事業であり、室が立ち上がる前は、色んな面で全く目途が立っていなかったことを考えると、設立団体や関係機関の方々の理解、協力と室員の苦労と努力により、一歩前進することができて、ホッとしています。
そもそも難しい事業ですが、建設全盛期のころから見れば、公社の技術力、組織力も低下しており、それをカバーするために、難事業の経験豊富な首都高速道路や地元大学などと連携することで、技術的なパフォーマンスを高めながら、今後、詳細設計、施工といった事業を進めようとしているところです。
パズルを組み合わせ、絡まった糸を解く感覚
――そんなに難しい工事なんですか。
森下さん そうですね。首都高道路の方からも「こんな難しい事業、よくやりますね」と言われましたから(笑)。それを聞いて、ショックでしたね。それでもやるのがミッションですので、あらゆる工夫と方策を挑戦的に考えるようにしています。
供用中の高速道路を大規模に改築するわけですが、そもそも、供用中の道路には今回の計画は全く考慮していないため、計画的な仕込みがない状態です。既存の高速道路だけでも、併設する平面街路、交差点、地下構造物や埋設物をお互いに考慮し、微妙なバランスのもと成立しているわけで、それが都市高速の難しいところですが、その状態のところに、さらにあちこちで渡り線、ランプを接続させる必要があります。
線形成立だけでも非常に難しいところ、地下には移設不可能な建築物、洞道、地下埋設物が沢山埋まっていて、構造的にそれを回避しなければいけないのも問題です。
極端に言うと、地上と地下の構造物がちぐはぐな位置にあるところをいかに施工し、安全な設計ができるか。パズルを組み合わせる、絡まった糸を解く、そんな感覚の箇所もあります。どうやって設計するか、どうやって施工するか皆で議論し、答えが見つからないと、見つかるまで、頭から離れないことも多いです。
2027年まで時間があるようで、実はあまりありません。難事業への対応策として、大胆な発想と緻密な計算が必要で、例えば、先行する新洲崎は、全国的にも例の少ない技術提案交渉方式の設計施工タイプにより、従来だと複数の工区・工種に分割発注するところを、一括発注し施工者技術力を設計にも反映させていただく、いわゆるECI方式として発注しました。発注や設計に関しては、何度か国総研・土研にも相談させてもらっています。
土木に進みたくても反対されて断念してしまった者です。
素晴らしいお話をありがとうございました。