17の防災コンパクト先行モデル都市が名乗り
かねてより、関係府省庁を挙げて市町村におけるコンパクトシティの取組を強力に支援するため、「コンパクトシティ形成支援チーム」を設置している。
また、頻発・激甚化する災害に対して、居住等の誘導をはかる地域の安全を確保しつつ、都市のコンパクト化をより推進するため、同支援チームのもと、防災に関与する部局で防災タスクフォース(以下、防災TF)を2020年7月10日に設置した。市町村に対する省庁横断、ワンストップの相談体制として、「防災指針」の作成や指針に位置付けた施策推進等を支援する。
構成員としては、座長が、国交省都市局都市計画課長がつとめ、原則として防災関連の施策を担当する関係省庁からなる。役割は、「防災指針」の作成にあたっての考え方や、まちづくりでの防災対策の検討にあたって、どのような知見や制度が活用できるかについてワンストップで相談対応する。
次に、「防災指針」の作成の手引き等をとりまとめるとともに、各市町村による防災対策の検討・実施を各省庁の関係部局が連携して、支援する。ほかの市町村が防災指針を作成するにあたり、参考となるモデル都市の形成と、その取組の状況を横展開する。
防災TFでは、都市の防災・減災対策を意欲的に取り組む都市であり、2020年度中に「防災指針」を市民への提示や作成・公表を目標としている都市のことを「防災コンパクト先行モデル都市」としている。
ほかの自治体が「防災指針」を検討・作成するにあたり、先行事例として模範・参考となるよう、取組み状況の段階的・定期的な公表が可能な都市である。
災害ハザードの情報の入手等にあたり、河川管理者等との連携が整っていることなどが条件。指定されたのは次の17都市だ(2021年1月1日現在)。
- 青森県・七戸町(※)、岩手県・二戸市、山形県・南陽市、福島県・郡山市、須賀川市、栃木県・宇都宮市、茨城県・ひたちなか市(※)、埼玉県・秩父市、神奈川県・厚木市、京都府・福知山市、大阪府・高槻市、忠岡町、岡山市・倉敷市、福岡県・久留米市、熊本県・熊本市、益城町、宮崎県・日向市
※令和2年11月20日の第2回防災TF会議で追加。その他は第1回会議で選定。
法律上、立地適正化計画を作成できる地方自治体は、約1,370。うち2025年までに600の都市で防災指針を作成することを目標に据える。

防災コンパクト先行モデル都市の選定状況(第2回防災TF会議資料) / 国土交通省
2020年9月の防災タスクフォース会議では、「防災コンパクト先行モデル都市の取り組み状況(マクロ・ミクロの災害リスク分析)」の資料を提示した。
この資料をどう読み解くべきか、小林課長補佐はこう解説する。
「モデル都市でマクロ・ミクロの観点から災害リスクの分析をした結果、概ね洪水と土砂災害についていずれの都市においても関連があり、ところによっては、内水被害の懸念が顕著なところや、沿岸部の都市では高潮や津波の懸念が大きい状況です。たとえば七戸町では高瀬川があり、近隣には役場の支所や、病院のような重要な施設もあります。浸水のおそれのある範囲は広範囲ではないものの、浸水被害や土砂災害の危険性がある箇所について、マクロとミクロの観点から、リスクを確認しています。
また、指定避難所から500m範囲を示してみると、河川沿いの浸水想定区域の範囲で近隣に避難所がない地域があることが見えてきます。そこで、この地域に新たに避難所を設けるのか、それとも早期の避難を実施するための手段を講じるかなど、避難における課題に体操する取組を考えていく着眼点になります。最終的な取組方針は地域の実情も踏まえた自治体の判断となりますが、まずは地域の災害リスクをしっかり把握し、これを対策に生かしていくことが肝要と考えています」

青森県七戸市における検討状況の例(第2回防災TF会議資料) / 国土交通省
このほか、郡山市では、浸水想定区域に中心部である郡山駅周辺も含まれており、阿武隈川と逢瀬川の合流点付近にあたる浸水リスクの高い地域に総合病院もあり、令和元年台風19号では浸水被害が発生していることを踏まえると、郡山市の課題の一つと考えられます。また、宮崎県・日向市は津波の浸水想定が広く分布するなど、各都市によってそれぞれの災害条の懸念があり、今後、各市町村が防災指針を作成するにあたっては、様々な災害についての検討が行われている各モデル都市の取り組み状況が参考になると思います」

福島県郡山市における災害リスクの分析事例(第2回防災TF会議資料) / 国土交通省
まちづくりの今後の展開
第2回防災タスクフォース会議では、都市局だけではなく、構成員である水管理・国土保全局、道路局、住宅局、内閣府、消防庁の予算支援等の施策も「パッケージ施策」として合わせて公表している。
各モデル都市からそれぞれ事情は異なるものの課題となる災害リスク分析の結果が示されている。年度末までに、引き続き防災タスクフォース会議を開催し、課題に対する取組方針等の検討状況や、モデル都市の「防災指針」のとりまとめ状況を確認し、これらの内容も踏まえ「立地適正化計画作成の手引き」の充実も図っていく。
これからのまちづくりは防災力が求められる。まずは、17の防災コンパクト先行モデル都市がリスク分析し、次に対応策を検討し、一部の都市では2020年度末までに防災指針を策定する。その後、各市町村が防災指針に基づいた具体的な対応策を実施していくにあたっては、今後、ゼネコン各社もこの防災力をにらんだまちづくりに参画することも想定される。
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