下関北九州道路は必要不可欠

下関北九州道路のイメージ(事業パンフレットより)
――福岡都市圏以外について、何かありますか?
見坂さん 福岡都市圏以外の道路で言えば、やはり下関北九州道路が必要です。福岡県だけでなく、九州全体を考えると、早く実現させなければならない道路だと考えています。本州と九州を結ぶ橋が関門橋1本だけというのは、あまりに貧弱です。関門トンネルがありますが、老朽化がかなり深刻化しています。福岡都市圏をはじめ九州の経済活動の発展を支えるためには、本州と九州を結ぶ物流の大動脈としての下関北九州道路は必要不可欠です。
竹廣さん やはり1本の橋で全て賄うのは限界がありますからね。冗長性の確保はやはり大事なことだと思います。いずれ関門橋の大規模修繕や架け替えの話も出てくるでしょうからね。
見坂さん 近い将来、大規模修繕を行うには、関門橋を全面通行止めにする必要性が発生することも想定されます。そうした事態に備えるためにも、少なくとももう一つのルートは必要なんです。夢物語ではなく、現実的に必要だということです。
竹廣さん そういう意味では、福岡県内にまだまだ道路が必要なところがありますね。久留米辺りでも慢性的な渋滞が発生していますから。
見坂さん そうですね。
将来必要な道路について語れる場が欲しい
竹廣さん 将来こういう道路があったら良いというアイデアを残しておくものとして、広域道路網計画などがあったのだと思うのですが、今は、将来の道路に関するアイデアや夢を語りにくい社会状況になってしまったと感じてなりません。
福岡市でも昔は、「将来的にこういう道路がいる」という段階で、都市計画決定していたんです。いつ事業化するかは未定でも。ところが最近は、事業を前提とした都市計画決定でなければならないという雰囲気になっている感じがあります。なかなか将来の道路を語れないというさびしさを感じます。
見坂さん 私は、建設業界向けにメッセージを出すことが大事だと思っているんです。先ほど広域道路網計画のお話がありましたけども、実は、今年6月をメドに新たな計画を策定し、公表することにしています。福岡県内における20年後、30年後を見据えた新たな道路網計画というものを策定するもので、少し夢物語のような道路も盛り込もうかなと思っています。
竹廣さん それは欲しいんですよね。夢物語を夢物語として語れる土壌が。名称に計画という文言が入ると、都市高速を伸ばすとか、新しいバイパスをつくるとかいう話に対して、「いくらかかるのか」とか「いつから始まるのか」という話になってしまいますが、まず夢物語として議論して、ある程度ラフスケッチをつくっておかないと、将来への対応が後手後手に回ってしまいますから。
見坂さん 「細かい話は置いておいて」ということですよね。あくまで計画論として。
竹廣さん そうです。事業主体や費用などは抜きにして語れる枠組みということです。計画ではなく構想ぐらいのタイトルにすれば、できるんじゃないかなと思っているんですが。
見坂さん 計画の中に構想路線として入れておくというのがいいでしょうね。例えば、有明海沿岸道路は当初は夢物語だと考えられていましたが、県内区間は全て完成しました。ただ、九州縦貫道とは接続されていません。横のルートがないんですね。いざというときのために、それぞれの道路が有機的に接合していないと、もったいないんじゃないかという思いがあります。新たな計画では、そういった道路を構想路線として盛り込んでいくことにしています。
竹廣さん そういうのが大事ですよね。
見坂さん 自分では「見坂プラン」と言っているんです(笑)。
竹廣さん プランと言うか、構想で良いんじゃないですか。災害などを考えると、道路は常に働いていないといけないインフラですから、色々な絵を後世に残しておくことは大事だと思います。
見坂さん 生活の基盤を支えるのは、いつの時代も道路だと思うんですよ。
働き方改革にはICT活用が必須
――働き方改革への対応について、お願いします。
竹廣さん 福岡市では、契約上の措置として、地場の業者さんを対象とした配慮に取り組んでいます。災害が発生したとき、もっとも頼りになるのはやはり地場の業者さんだからです。地場の業者さんがちゃんと経営できるよう、発注者としてしっかり工事を出していく必要があります。
見坂さん いざというときに頼りになるのは地場の業者さんというのは、福岡県でも同じです。平素から地場の業者さんが健全な経営ができるような工事発注をしていかなければいけません。
竹廣さん 公共事業は地域経済のためにも必要なことなんです。ふだん「公共事業はムダだ」と言う人がいるのですが、災害が発生したときに「早く復旧しろ」と言うのも同じ人なんですね(笑)。
地場の業者さんと直接お話をする機会がままあるのですが、「人が入って来ん」「人がつきにくい」と言う話をよく耳にします。週休2日とかいわゆる働き方改革がネックになっているようです。福岡市ではその辺をなんとかしようとしているところですが、福岡県はどうですか?
見坂さん 福岡県でも週休2日にはしっかり取り組んでいます。
竹廣さん ただ、小さい工事だと、なかなか週休2日にできないようです。地場業者さんの中には、日雇いの職人さんとの関係が深い会社が多いので。
見坂さん 職人さんは日給月給なので、休みたがらないようですね。
竹廣さん ムリやり土日休みにすると、職人さんがその日は別の現場に入りかねないそうです。
見坂さん 工期の問題もあります。ちゃんと週休2日取るためには、十分な工期設定を行う必要があります。
竹廣さん 働き方改革で言えば、建設業における労働時間規制への対応があります。これに関しては、地場の業者さんにも真っ先に対応してもらわないといけません。福岡市としても、この辺をどう考えているのか、業者さんとそろそろ意見交換しないといけないと考えているところです。「職人が逃げるから」と言って、どうにかなるレベルの話ではありませんので。地場業者さんの中でも、とくに中小企業がちゃんと対応できるかが課題になると考えています。
業者さんとの意思疎通は非常に大事です。われわれが大上段に構えて、「働き方改革なので、やりましょう」と言っても、業者さんになかなか聞き入れてもらえないことが多いので(笑)。「そんなことしよったら、ウチは困る」と苦情しか聞けなくなってしまいます。
見坂さん 働き方改革を進める上では、ICT活用は待ったなしだと思います。福岡県では令和2年度から導入して良かったと思っているのが、WEB遠隔臨場システムです。県土整備事務所にいながら、WEB上で現場検査などができるわけです。ちょっとしたことですけども、時間的なロスがかなり減ります。試行的に導入したものですが、コロナ対策にもなるので、これから色々な現場でどんどん導入していったら良いと考えているところです。
竹廣さん 福岡市でも令和2年6月から、オンライン協議ということで、モバイル端末による業者との協議打ち合わせをスタートさせています。これは私が所管している部署が担当で、iPad20台をリースして、各セクションに貸し出しており、LINEやZoomなどのソフトを使って、現場確認、コンサルとの打ち合わせなどを行っています。私としてはもっと活用できると思うのですが、今年1月の時点で400回、延べ540時間ほど使用実績があります。現場に行く分の時間削減の効果は約200時間ということになっています。
昨年12月からは、遠隔臨場として、配筋検査などの中間検査にもiPadを活用しています。他県にある工場での検査なんかも、業者さんの工場と工事事務所と市役所をZoomでつなぐことで、可能になっています。寸法なんかもちゃんと確認できたようです。職員の出張代も浮きました(笑)。
見坂さん 職員にとってもラクになっていると思います。福岡県の場合、福岡市と比べると、事務所から現場までかなり遠いことが多いですから。特に現場が離島の場合は、半日分の時間ロスを減らせます。
ある記者の方に「遠隔臨場が悪用されるんじゃないですか」と質問されたんですが、ここは発注者と業者さんの信頼関係でやっていくしかない。そこを疑いだすと、何もかも進まなくなってしまうと説明しました。