DX、激甚化する災害対応を新目標に
国土交通省は今回提起した8つの目標を具現化することになるが、大きな注目点は「社会環境の変化」の視点に基づく、
- 「新たな日常」やDXの推進等に対応した新しい住まい方の実現
- 頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まい方の確保
の2つの目標だ。この目標1と2を具体的に見ていく。
目標1. 「新たな日常」やDXの推進等に対応した新しい住まい方の実現
(1)国民の新たな生活観をかなえる居住の場の多様化及び生活状況に応じて住まいを柔軟に選択できる居住の場の柔軟化の推進
(基本的な施策)
- 住宅内テレワークスペース等を確保し、職住一体・近接、在宅学習の環境整備、宅配ボックスの設置等による非接触型の環境整備の推進
- 空き家等の既存住宅活用を重視し、賃貸住宅の提供や物件情報の提供等を進め、地方、郊外、複数地域での居住を推進
- 住宅性能の確保、紛争処理体制の整備などの既存住宅市場の整備。計画的な修繕や持家の円滑な賃貸化など、子育て世帯等が安心して居住できる賃貸住宅市場の整備
(2)新技術を活用した住宅の契約・取引プロセスのDX、住宅の生産・管理プロセスのDXの推進
(基本的な施策)
- 持家・借家を含め、住宅に関する情報収集から物件説明、交渉、契約に至るまでの契約・取引プロセスのDXの推進
- AIによる設計支援や試行的なBIMの導入等による生産性の向上等、住宅の設計から建築、維持・管理に至る全段階におけるDXの推進
(成果指標)
- DX推進計画を策定し、実行した大手事業者の割合 0%(2020年)→ 100%(2025年)
目標2.頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まい方の確保
(1)安全な住宅・住宅地の形成
(基本的な施策)
- ハザードマップの整備・周知等による水災害リスク情報の空白地帯の解消、不動産取引時における災害リスク情報の提供
- 関係部局の連携を強化し、地域防災計画、立地適正化計画等を踏まえ、
・豪雨災害等の危険性の高いエリアでの住宅立地を抑制
・災害の危険性等地域の実情に応じて、安全な立地に誘導するとともに、既存住宅の移転を誘導 - 住宅の耐風性等の向上、住宅・市街地の耐震性の向上
- 災害時にも居住継続が可能な住宅・住宅地のレジリエンス機能の向上
(2)災害発生時における被災者の住まいの早急な確保
(基本的な施策)
- 今ある既存住宅ストックの活用を重視して応急的な住まいを速やかに確保することを基本とし、公営住宅等の一時提供や賃貸型応急住宅の円滑な提供
- 大規模災害の発生時等、地域に十分な既存住宅ストックが存在しない場合には、建設型応急住宅を迅速に設置し、被災者の応急的な住まいを早急に確保
(成果指標)
- 地域防災計画等に基づき、ハード・ソフト合わせて住まいの出水対策に取り組む市区町村の割合を5割(2025年目標)とする。

「社会環境の変化」の視点での目標
目標1について、三浦課長補佐は「大手住宅事業者とは、注文戸建て住宅を中心におおよそ年間3,000戸以上供給している事業者を想定しています。各社にDXの計画を策定していただき、2020年を基準に評価していきます。今後5年間でこれまで以上にDXを推進してほしいと考えています」と話す。
また、目標2については、先日、流域治水関連法(特定都市河川浸水被害対策法等の一部改正法)が国会で成立しましたが、同法により新設された「浸水被害防止区域(いわゆる浸水レッドゾーン)」や、従来の建築基準法に基づく「災害危険区域」の更なる指定を進め、豪雨災害等のリスクの高いエリアにおける住宅立地を抑制していくこと等により、災害に強い住まいを目指すことを示している。
「地方自治体では防災・まちづくり・建築等の部局が分かれており、これまで連携が十分に意識されていませんでした。防災部局で策定されている地域防災計画等をもとに、部局間連携の下でハード・ソフト一体となった住まいの出水対策に取り組むよう政策誘導をはかるとともに、国土交通省内でも住宅局と都市局、さらには内閣府防災との連携を強化します。(三浦課長補佐)
高齢化、子育て対策にも注力へ
目標3以降は、施工面に限定し、ほかは割愛し解説していく。
目標3.子どもを産みやすい育てやすい住まいの実現
(1) 子どもを産み育てやすく良質な住宅の確保
(基本的な施策)
- 民間賃貸住宅の計画的な維持修繕等により、良質で長期に使用できる民間賃貸住宅ストックの形成と賃貸住宅市場の整備
(成果指標)
- 民間賃貸住宅のうち、一定の断熱性能を有し遮音対策が講じられた住宅の割合 約1割(2018年)→ 2割(2030年)
目標4.多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり
(1) 高齢者、障害者等が健康で安心して暮らせる住まいの確保
(基本的な施策)
- エレベータの設置を含むバリアフリー性能やヒートショック対策等の観点を踏まえた良好な温熱環境を備えた住宅の整備、リフォームの促進

「居住者・コミュニティ」の視点での目標3,4
「民間賃貸住宅についても、子育てしやすい住まいの確保という観点から、更なる質の向上を目指すため、今回新たに成果指標を設けました」(三浦課長補佐)