住宅業界もカーボンニュートラルの取組み本格化
目標6.脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成
(1)ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とする既存住宅流通の活性化
(基本的な施策)
- 基礎的な性能等が確保された既存住宅の情報が購入者に分かりやすく提示される仕組みの改善(安心R住宅、長期優良住宅)を行って購入物件の安心感を高める
- これらの性能が確保された既存住宅、紛争処理等の体制が確保された住宅、履歴等の整備された既存住宅等を重視して、既存住宅取得を推進
- 既存住宅に関する瑕疵保険の充実や紛争処理体制の拡充等により、購入後の安心感を高めるための環境整備を推進
(2)長寿命化に向けた適切な維持管理・修繕、老朽化マンションの再生(建替え・マンション敷地売却)の円滑化
(基本的な施策)
- 長期優良住宅の維持保全計画の実施など、住宅の計画的な点検・修繕及び履歴情報の保存を推進
- 耐震性・省エネルギー性能・バリアフリー性能等を向上させるリフォームや建替えによる、良好な温熱環境を備えた良質な住宅ストックへの更新
- マンションの適正管理や老朽化に関する基準の策定等により、マンション管理の適正化や長寿命化、再生の円滑化を推進
(成果指標)
- 既存住宅流通及びリフォームの市場規模 12兆円(2018年)→ 14兆円(2030年)
- 住宅性能に関する情報が明示された住宅の既存住宅流通に占める割合 15%(2019年)→ 50%(2030年)
(3)世代をこえて既存住宅として取引されうるストックの形成
(基本的な施策)
- 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、
・長寿命でライフサイクルCO2排出量が少ない長期優良住宅ストックやZEHストックを拡充
・ライフサイクルでCO2排出量をマイナスにするLCCM住宅の評価と普及を推進
・住宅の省エネルギー基準の義務づけや省エネルギー性能表示に関する規制など更なる規制の強化 - 住宅・自動車におけるエネルギーの共有・融通を図るV2H(電気自動車から住宅に電力を供給するシステム)の普及を推進
- 炭素貯蔵効果の高い木造住宅等の普及や、CLT(直交集成板)等を活用した中高層住宅等の木造化等により、まちにおける炭素の貯蔵の促進
- 住宅事業者の省エネルギー性能向上に係る取組状況の情報を集約し、消費者等に分かりやすく公表する仕組みの構築
(成果指標)
- 住宅ストックのエネルギー消費量の削減率(2013年度比)※ 3%(2018年)→ 18%(2030年)
※ 2050年カーボンニュートラルの実現目標からのバックキャスティングの考え方に基づき、規制措置の強化やZEHの普及拡大、既存ストック対策の充実等に関するロードマップを策定
※ 地球温暖化対策計画及びエネルギー基本計画の見直しにあわせて、上記目標を見直すとともに、住宅ストックにおける省エネルギー基準適合割合及びZEHの供給割合の目標を追加 - 認定長期優良住宅のストック数 113万戸(2019年)→ 約250万戸(2030年)

「居住者・コミュニティ」「住宅ストック産業」の視点での目標

「住宅ストック・産業」の視点での目標
「既存住宅が円滑に流通する社会に変えていくためには、既存住宅の性能に関する情報が分かりやすく提示される必要があり、長期優良住宅のような良質かつ性能が明確な住宅を増やしていく必要があります。また、住宅を「つくって終わり」ではなく、管理や維持修繕も非常に重要であり、そうした点を建築時点から意識していただくことが大切です。さらに、ストックの質を高めるために、適切なリフォームや建て替えについても施策を推進し、新築・既存双方に対する取組により、ストックベースで長期優良住宅の比率を上げていきたいと考えています」(三浦課長補佐)
また、菅義偉首相は2020年10月26日の臨時国会で、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しているが、「宣言を踏まえて、ZEHの普及拡大により、住宅分野での消費エネルギーを減らしていきます。LCCM住宅は、建築から解体までトータルでのCO2をマイナスにするものですが、こうした一歩進んだ住宅の普及も行っていきます。」(三浦課長補佐)
加えて、4月1日から「建築物省エネ法」が本格改正され、小規模(床面積300m2未満)非住宅・住宅では、省エネルギー基準適合を努力義務としたほか、建築士から建築主への説明義務を新たに設けている。「住宅の省エネルギー基準の義務づけや省エネルギー性能表示に関する規制など更なる規制の強化も、今回の計画の非常に大きなポイントで、具体的な中身の検討を開始したところです。」(三浦課長補佐)
目標7.空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進
(2)立地・管理状況の良好な空き家の多様な利活用の推進
(基本的な施策)
- 空き家・空き地バンクを活用しつつ、古民家等の空き家の改修・DIY等を進め、セカンドハウスやシェア型住宅等、多様な二地域居住・多地域居住を推進
目標8.居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展
(1)地域経済を支える裾野の広い住生活産業の担い手の確保・育成
(基本的な施策)
- 大工技能者等の担い手の確保・育成について、職業能力開発等とも連携して推進。地域材の利用や伝統的な建築技術の継承、和の住まいを推進
- 中期的に生産年齢人口が減少する中で、省力化施工、DX等を通じた生産性向上の推進
- CLT等の新たな部材を活用した工法等や中高層住宅等の新たな分野における木造技術の普及とこれらを担う設計者の育成等
(2)新技術の開発や新分野への進出等による生産性向上や海外展開の環境整備を通じた住生活産業の更なる成長
(基本的な施策)
- AIによる設計支援やロボットを活用した施工の省力化等、住宅の設計・施工等に係る生産性や安全性の向上に資する新技術開発の促進
- 住宅の維持管理において、センサーやドローン等を活用した住宅の遠隔化検査等の実施による生産性・安全性の向上
- 官民一体となって我が国の住生活産業が海外展開しやすい環境の整備

「住宅ストック・産業」の視点からの目標
「目標8については、現在、大工技能者等の確保・育成の支援を行っていますが、今後は厚生労働省の職業能力開発とも連携しながら取り組んでいくこととしています。また、住宅産業全体で見ると生産性向上や海外展開も重要な点ですので明記しています」(三浦課長補佐)