家田会長「求められる”内なる開国と国際化”」
土木学会は、なぜ、海外インフラ展開について提言を行ったのか。まず、家田仁会長(政策研究大学院教授)の発言要旨から探ってみよう。
「土木界も一生懸命やってきましたが、ここに来てある種の飽和感や限界を感じています。限界を突破するには制度、ものの考え方や働き方を変える自己転換が必要です。
次に市場を拡大することで、国土やインフラなど土木の世界に活力をもたらしたい。活力のないところには進化がない。また、進化のないところに明日への質はありません。
今、日本の土木技術の質が高いと言われていますが、明日も高くするためには活力が必要で、活力のためには市場が必要です。そこで市場から質へというのが2番目の流れです。今、日本が保有している技術や制度等が世界のトップランナーを本当に走っているのかとの自己反省をきっちりと行っていかなければなりません。
海外に対してより開かれた内なる「開国」や「国際化」をし、技術や制度の自己改革を展開しなければなりません」
元々この提言は、土木学会内の海外展開に携わるメンバーにより「今後の海外インフラ展開に向けた変革のあり方検討会」(森昌文委員長、東日本高速道路株式会社代表取締役兼専務執行役員)が組織されたことに始まり、とりまとめられた。提言を細かく見ると、日本企業に対する危機感が随所に感じられる。日本全体で海外インフラ展開を本格化するために、変革をしなければならないと強く迫った提言である。
「海外と日本はつながっている世界であり、海外で活躍することが跳ね返って日本の質の高いインフラをもっと磨くことにつながる。厳しい環境の中でがっちり競争することで土木技術はもっと磨かれていくことが提言の底流にあります」(家田会長)
森委員長「ODA案件から脱却し、自身でビジネスの創造を」
森委員長は次のように語った。
「現在、新型コロナウイルスで日本の海外インフラ展開はままなりませんが、ずっと続くわけではありません。むしろ、この小休止をビジネスチャンスとしてとらえ、次に向けての新たな準備をして、飛躍することを期待しています。
海外事業はプロがやっていることと受け止めている方もいるかもしれませんが、素人でもまだ間に合います。重要なことは英語がペラペラ話せることではなく、土木に関する基礎技術であり、これからアジアやアフリカに進出し、貢献することはいくらでもできます。それを土木業界に強く発信したい」

土木学会「今後の海外インフラ展開に向けた変革のあり方検討会」の森昌文委員長
また、森委員長は私見と断りを入れつつ、「日本企業も海外に進出していると言っておりますが、その実、ODA案件に頼っている面が大きい。土木ではないが建築分野においては、日系企業の案件に依存している。これで確かに数字は達成しているのかもしれません。しかし、国内市場がこれから拡大するのは考えにくい実情を見ても、競争できる力を持った方は、中小の市場を荒らすようなことはやめて、海外に進出して欲しい。
日本企業もODA案件から脱却し、これからはプロジェクトを自らつくって、ファイナンスも集めて、進めていくプロセスがこれからは必要になる。アジア・アフリカの各政府もODAよりも投資を呼び掛けているトレンドです。日本企業も個人もそうした点にフォーカスをあてなくてはいけない。基本的に、政府が先導してプロジェクトをつくって、日本企業をそこに誘導する時代ではありません。これが提言のバックボーンにあります」とも語った。
森委員長の発言はかなり辛辣ではあったが、海外インフラ展開にあたっては、現在、PPP事業が期待されており、民間資金が重要になってきている。そこで単なる請負業から、自らをインフラサービスのプロバイダーとして参入し、そのエリアを拡大することが求められているため、このような発言につながったと思われる。
そこで海外インフラヘの参入のポイントは、いくつかあるが、やはり「人材」と「経営者」のマインドではないだろうか。
日本の質の高い技術を強みとして、事業展開するにあたり、持続可能な質の高い技術を維持したいものです。そのため、土木と建築が一体となって、互いに励まし合って質の高い技術向上できるように希望します。技術力だけではなく、世界を相手に交渉力を高め、いかなることが起きても、柔軟に対応出来る総合力を培い、官民一体となって、世界のトップランナーになるよう期待したいものです。
日本の質の高い技術を強みとして、事業展開するにあたり、持続可能な質の高い技術を維持したいものです。そのため、土木と建築が一体となって、互いに励まし合って質の高い技術向上できるように希望します。技術力だけではなく、世界を相手に交渉力を高め、いかなることが起きても、柔軟に対応出来る総合力を培い、官民一体となって、世界のトップランナーになるよう期待したいものです。
官が絡むとろくな目に合わない。
海外で日本の基準はオーバースペック。
必要とされてない。
もっと濡れてに粟、のマインドでいかないと