月面での有人活動は2035年を見込む
――いつ月面に着陸するのでしょうか。
増 おおよそ10年後には月面での開発を始める見込みと伺っており、その後無人拠点を建設するためには、無人化・遠隔化技術の確立が必要となります。
そのためにはまず、月面開発に役立つ無人建設技術である施工、建材製造、建築等の開発を重点化・加速化するため、月面と地上のノウハウを集結します。そして、無人建設に関係する各種技術の水準、達成見込みを見極めるために、実験室、試験場、建設現場で実証実験を行う予定です。
プロジェクトのスケジュールとしては、2021年からの5年間で基盤技術としての確立を目標としており、その後、2025年頃からの実証・実用化、2030年頃からの無人拠点建設、2035年頃からのには有人常時滞在につなげていくことを目指しています。
イメージ的には最初は人が月に着陸し、短い滞在期間において、機材を降ろして無人・遠隔操作で拠点建設し、周辺の調査や探査を進めつつ拠点を拡げ、その後、人が中長期的に居住する環境を整えていくと考えています。
――「無人建設革新開発推進協議会」ではどのような話が?
増 地上での無人建設の背景、宇宙における動向について話し合われ、スターダストプログラムを進めていくため、学識有識者、行政関係者(国土交通省・文部科学省・内閣府)や関連する研究機関が集まり、どういう項目の技術開発が必要であるかを協議しました。
その後、「無人建設革新技術開発」の参加者を公募し、対象技術は、無人建設技術(自動化、遠隔化)、月面で使用する建材製造技術、月面の簡易施設の建設技術を募集しました。予想以上の企業や大学から多様な技術研究開発の応募があり、協議会での審査を経て、自動化・遠隔化、建材製造、簡易拠点建設に係る技術開発の決定をしました。
――どのような技術研究開発が実施対象になりましたか?
増 「無人建設(自動化・遠隔化)に係る技術」としては、「測量・調査から、施工に至る、各種建設作業のための機械・システムに係る研究開発」が6件、「建材製造に係る技術」では、「製造・施工方法、新素材に係る研究開発」が2件、「簡易施設建設に係る技術」では、「膜構造、展開構造物に係る研究開発」が2件とそれぞれ決定しました。
今後、「無人建設革新技術開発推進協議会」の体制の下、個別の技術研究開発を進めつつ、課題ごとのワーキング等で協調・連携を図り、5か年間の事業として、我が国の建設事業の高度化を実現し、近い将来の月面等宇宙開発における建設活動に資することを目指します。
この10件の研究開発内容は下記の通りです。なお、各取り組みの詳細も国土交通省ホームページに掲載しております。
――地上の無人化施工技術はすぐに月面に応用できるのでしょうか。
増 月面と地上とでは大気や重力など環境が異なりますから、すぐに導入するのは難しいと思います。とはいえ人がいないところで働く遠隔・自動施工に係る基盤技術は両方に活用できるのではないでしょうか。
基礎的な土木技術における遠隔・自動化での土工作業が月面でも多くなると想定されますので、掘削や土地の均しの作業は必要とされます。将来的には、地上と月面の両方で効果が出せる基盤技術を目指していければと考えています。