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南海トラフ地震に備えるためには、東北の被災地の”今の姿”を見るべき

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公開日:2021.11.04 / 最終更新日:2022.08.16
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近代ドボク以降も木が使われていた

――他の工法などから反発もありそうですが。

原さん それは当然あるでしょう。既存の工法関係者からすれば、後発の工法ですから。ただ、ドボクに木を使うことは、近代土木が輸入された明治以降も普通にやっていたことで、歴史の長い工法です。液状化対策としての丸太の打設も幾つか事例があり、構造物の被災例はありません。昭和30年ぐらいまでは、日本の基礎杭はすべて木を使っていました。ところが、高度経済成長で建設ラッシュを迎えた際に、日本の木材が枯渇した時期があり、政府が法律をつくって、木材利用にストップをかけました。それ以降、ドボクで木が使われなくなったという経緯があるんです。これによって、林業は衰退しました。

――液状化対策の普及で、ネックがあるとすれば、なんでしょうか?

原さん 予算の確保が重要です。丸太工法に限らず液状化対策は自治体からも「やりたい」という声が上がるのですが、予算がネックになっています。ある程度の敷地面積の液状化をやろうと思ったら、ゆうに1億円はかかりますが、地盤に特化した補助金のメニューはほとんどありません。これが自治体の液状化対策がなかなか進まない一つの理由です。

安価な木材を大量にドボク資材として使えるか

木材と土木利用をテーマとしたシンポジウム(2021年3月) ※画像:原教授提供

木材と土木利用をテーマとしたシンポジウム(2021年3月) ※画像:原教授提供

――ドボクへの木材利用にも取り組んでいるようですね。

原さん そうですね。学会では土木学会木材工学委員会、四国土木材利用研究会という組織がありまして、研究会では会長を仰せつかっています。この研究会では、ほぼ毎年シンポジウムを開いて、ドボクへの木材利用に関する知見の共有などを行っているところです。最近では、CLTを橋梁の床版に使用した事例とか、丸太打設のメリット、環境面からの優位性などを学識者にお話しいただきました。研究会は土木学会の会員や森林総合研究所四国支所、高知県などと協力しながら、活動しています。

――四国で活動しているということですか?

原さん 研究会としてはそういうことになりますが、土木学会の木材工学委員会という委員会の活動の一環として活動しています。土木学会では、ドボク分野での木材利用の拡大に向けて、日本森林学会と日本木材学会と連名で、2013年に「土木分野での木材利用拡大に向けて」と題した最初の提言書を国土交通省、林野庁に提出しています。学会では、地方での活動も活発化したいというねらいがあって、高知以外でも、北海道、秋田、千葉、福井、佐賀などでも活動しています。

――CLT利用は建築分野のイメージですが、ドボク分野でも利用が進んでいるのですか?

原さん ドボク分野でのCLT利用は、まだ始まったばかりというところです。2021年より林野庁の協力を得てCLT土木開発利用委員会が発足し、委員長を仰せつかっています。CLTはヨーロッパを中心に開発が進みましたが、いずれの国も建築構造物への利用が主で、ドボクへのCLT利用はそれほど多くありません。CLTの利用拡大は、日本の国策になっていますが、お話のあった建築分野だけの利用では、利用量が劇的に増えません。どれだけたくさんの量のCLTを安価な価格で提供し、使われるかは、国内外で大きな課題になっているわけです。

CLTの利用量を増やすには、規模の大きなドボク工事で使う必要があります。そのためには、木材の性質とか用途などを調べていかなければなりません。CLTのライフサイクルをどう設定するかも大事です。長期にわたってもたせるのか、それとも短期で交換するのか、発想の転換も必要です。

CLT利用の研究会では、実証実験などを計画しており、今後5年間をメドに実用化に向けた考え方や具体的な活用法を整理していく予定です。

木材のドボク利用には3つの弱点がある

――土木学会的には「これからはハイブリッドインフラだ」と考えているフシがあるようですが。

原さん 木材の構造材として利用する際の弱点は、自然素材ならではの課題がいくつかあります。1つは形状が一定しないことです。木は根本と先では太さが異なるので、加工しないとテーパー形状になってしまいます。木を削れば太さを同じにできますが、その分余分な費用がかかります。こうなるとほかのドボク資材に比べ、コスト的や工期面でキビしくなる可能性もあります。

2つ目の弱点は、生物劣化することです。皆さんこの点を気にされます。気中に設置された構造物では、構造材としての断面が小さくなったり、虫に食われて構造材が削られるという問題がありますが、酸素が遮断される地盤内などでは腐朽しませんし、薬剤の注入などの対策も実用化されています。木は腐りやすい、との誤解に基づく部分が多いように思います。

そして最後に、木材の安定供給です。例えば、1万本の木材を利用する場合、どこかにあらかじめストックしておかないと、すぐには供給できません。貯木しておく必要があるわけですが、林業サイドからすれば、いつオーダーが入るかわからないのに、何十万本もの木をストックしておくことは非常に難しいです。土木資材として安定供給するためには、木材のストック、流通をどうするかも含め、新たな仕組みを考える必要があります。

私は「すべてに木を使う」と言っているわけではありません。「木を使うこともできますね」というスタンスでいます。正しい知識に基づいて、良い面を生かした柔軟な発想が今後の土木工事には必要です。これからの工事には環境面での評価も重要ですので、採用にあたってもっと評価して良いように思います。

――実際に施工する建設会社サイドの木材利用に対する反応はどうですか?

原さん 関心の高い建設会社さんもたくさんいらっしゃいます。「木でこんなことができるんですね」みたいな。新しい技術というものは、最初はそういう感じで始まるものだと思っています。チャンネルを広げて、いろいろな方々に話を聞いてもらうところからスタートするものだと思っているわけです。学術的な立場からエビデンスを導くだけでなく、新しい技術を世の中に広めていくことも、われわれ研究者の役目だと考えています。

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コメント(1)

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  • - 2021/12/03 22:52

    CLTは調べてもメリットの話しか出てこないから信用していない。木と樹脂なんだからデメリットが無いわけが無い。デメリットが示されないと在来工法と比較ができないから、ほとんどが公共事業の土木で普及するのは難しいと思う。

    返信する 通報する

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