ゼネコンなどと協業し、サプライチェーンを構築
――これまでの現場施工では、どのような知見が得られているのでしょうか。
人見幹事長 これまで下水道資材、道路用側溝蓋、U字溝、道路用L型側溝などを施工し、その実用性を確かめてまいりました。
その結果、いずれの用途としても実用に耐えることが分かっており、特に福島県・三春町における道路用側溝蓋としての施工では、“EeTAFCONは黒ずみにくい”という長所を見出すことができています。
また、秋田県・仙北市の乳頭温泉郷妙乃湯では、セメントコンクリートやCO2低排出型コンクリート製試験体を、温泉水に曝露し、経時的強度変化を評価しました。セメントのほうは強度が崩れて色が落ち、骨材露出もありました。しかし、EeTAFCONは骨材が露出せずに元の形を保っており、強度の違いも出ました。
これまでの実証実験はほぼ土木分野の事例ですが、今後建築への採用も視野に入る手ごたえを感じました。こうした取組みを繰り返し行い、今後はNETIS(新技術情報提供システム)へ技術認証の申請をする考えです。
――今後、研究会ではどのような活動をされていく?
中川幹事 研究会を通じて中川ヒューム管工業以外のメーカーにもEeTAFCON製造技術を展開するとともに、現場導入をゼネコンなどに働きかけサプライチェーンを構築することを目指しています。また、新しいコンクリートであるEeTAFCONを皆さんに知ってもらうため、PRにも積極的に注力していきます。
研究会の構成ですが、2022年10月時点で40社が研究会に加盟しており、コンクリート関連の会社が18社、材料メーカーが3社、ゼネコン・電力会社・学識経験者も参加しています。そして、研究会には3つの委員会を設置しています。
一つ目は、主にコンクリート製品会社で構成する「技術委員会」です。この委員会では、各コンクリート製品会社においてEeTAFCONの製造性や実用性に関する検証を図り、技術評価を取得していく考えでいます。
二つ目は、材料化学や構造工学に関する学識経験者にご参加いただいている「学術委員会」です。本委員会では技術委員会において取得した試験データの分析や、研究開発方針の議論を図ってまいります。
三つ目は、ゼネコン、橋梁メーカー、および電気事業者等で構成する社会実装委員会です。ゼネコンおよび橋梁メーカーとは、土木構造物や建築物へEeTAFCONを導入していくため、製品開発の方向性などを共に議論いたします。具体的には、土木ではトンネル・港湾構造物・橋梁、建築ではEeTAFCONが黒ずみにくいという特性を活かしたバルコニーなどを提案したいと考えています。
また、同委員会にはEeTAFCONの主原材料であるフライアッシュのサプライヤーである電気事業者にも参画いただいております。このため研究会では、原材料供給を担う電気事業者、製造を担うコンクリート製品メーカー、そして施工を担うゼネコンと一体となり、サプライチェーンの構築を目指し活動いたします。
――最後に、今後の普及に向けて、一言お願いします。
人見幹事長 EeTAFCONを世に広めるため、本格的な実用化に向けては環境省や国土交通省の後押しにも期待しています。現在議論されている「カーボンプライシング」が進展すれば、EeTAFCONに更なる付加価値がついていくと期待しています。
また、EeTAFCONの材料はほぼ産業副産物であることから、従来コンクリートとの価格差は今後さらに詰まっていくと考えています。あとはサプライチェーンの構築とともに、更なる技術発展を図ることで、将来的な需要が増していくと考えています。
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