時代のニーズに合わせ、コンクリートも変わっていく必要がある
――コンクリートという材料は、これから大きく変わっていくのでしょうか?
石田先生 コンクリートは非常に良くできた材料だと思っています。単価が安く、自然の中に豊富にあって、カタチや強度も自由自在なんです。こんな材料は他にはありません。コンクリートに代わる材料を思いつきません。
ただ、時代の変化に伴い、コンクリートに求められるものが多様化しています。変わっていく必要があると思っています。それが、うちの研究室でやっている超高寿命のコンクリートであったり、環境負荷が少ないコンクリートであったりするわけです。これらの研究は、社会的な要請が非常に強いので、絶対に成功させなければならないと考えています。
コンクリートのつくり方も、豊富な労働力を前提とした今までのやり方では絶対に続かないので、デジタルを使ってオートメーション化していく必要があると考えています。これについては、3Dプリンターに関する研究なんかもしています。
「デジタル×土木」でイマドキの学生の関心に応える
――研究室メンバーはどういった感じですか?
石田先生 准教授1名、助教3名とスタッフが5名、学生が25名で、その約半分以上が海外からのスタッフや留学生ですので、研究室の公用語は英語です。ポスドク研究員が6名、博士課程の学生が7名、修士課程が9名、学部学生が4名です。女性スタッフ・学生も7名います。
――これも一般論として、「学生の土木離れ」が言われていますが、東大はどういう状況ですか?
石田先生 東大では15年ほど前に、学科名を土木工学科から社会基盤学科に変えました。土木の領域を拡張し、「土木×デジタル」「土木×政策」「土木×マネジメント」などへの取り組みを進める学科です。イマドキの学生さんの関心に応えるというねらいがありました。それとともに、国際プロジェクトコースを新設しました。これによって、社会基盤学科の学生の人気が非常に高まりました。私としては、良い学生に恵まれて、ありがたいと思っています。
――国際プロジェクトコースとはどのようなものですか?
石田先生 社会基盤学科の定員は50名で、設計技術戦略コース20名、政策計画コース20名、国際プロジェクトコース10名の3つのコースに分かれています。国際プロジェクトコースは、開発途上国が抱えている課題解決とか、国際紛争、インフラ開発に関して学ぶコースです。
――石田先生自身も海外を視野に入れた研究をされていたりするのですか?
石田先生 そうですね。ドイツやフランス、香港など海外との国際共同研究も活発に進めています。
昔はキャリア官僚志向だったが、今は経営コンサルなどが人気
――最近の学生さんの就職動向について、教えていただけますか?
石田先生 ゼネコン、鉄道会社、高速道路会社、商社、それから経営コンサルタント会社といったところですね。昔は優秀な学生が霞ヶ関(キャリア官僚)を目指しましたが、今は商社や金融、経営コンサルタントなどの民間企業に就職する学生が多くなっています。
――最近は霞ヶ関に行く学生さんは減っているのですか?
石田先生 一時期に比べて、かなり減っていると思います。社会基盤学科・専攻だけの動向ではなく、文系も含めて、東大全体で減っているようです。私としては、国家の運営を担う分野にもっと多くの学生が行ってほしいのですが、働き方などで課題が指摘されているので、少し敬遠されているのかもしれません。昨今、いろいろと状況改善に向けた取り組みを進めているようなので、今後に期待したいと思います。
――「優秀な東大生ほど起業する」という話を聞きましたけど。
石田先生 そうですね。社会基盤学科では少ないですが、情報工学系の学生さんは相当多くが起業しています。AIなどを研究している松尾豊先生の研究室は、半分ぐらいの学生が起業していて、残りの半分が博士号をとると聞いています。スゴいですよ。
工学系研究科としても、アントレプレナーシップとかスタートアップに対する教育に熱を入れています。土木分野でも、今後、起業する学生が増加していくと良いと思っています。実際、社会基盤学科出身で、AIなどを活用して道路点検するサービスで起業した人もいます。
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