情報化施工と「中身は一緒じゃん」
――菊地さんがICT施工をはじめてやったのはいつですか?
菊地さん 平成28年ですね。やはり堤防工事でした。その前の情報化施工のころからGNSS締め固め管理やTS出来形などは一通りやっていました。ICT施工になったところで、「中身は一緒じゃん」と思ったので、「じゃあICT施工をやってみよう」となりました。会社からも「やるしかねえだろ」みたいなプレッシャーもあったので(笑)。
実際にやってみると、機材なんかも手持ちのものが使えたので、それほど苦労することなくできました。「ICT施工といっても情報化施工の延長だな」と思いました。
――それほど苦労はしなかったんですね。
菊地さん はじめてにしては、思ったより苦労しなかったということです。ただ、起工測量、出来形測量については、見た目が映えるので、レーザスキャナでなく、とあるカメラメーカーのUAVで写真測量をやることにして、点群データの処理はとあるシステム会社さんのソフトを分からない所を教えてもらいながら処理し、当時のUAVは自分たちでちゃんと飛行計画を組まないとうまくラップしてくれないものでした。結果的には、自分たちにノウハウを蓄積することができたので良かったのですが、最初は手探り状態で大変でしたね。
建機はICT建機ではなく、手持ちの重機に後付けでやりました。この辺は全部自分たちでやるのはキビしかったので、お付き合いのあったアクティブ・ソリューションさんにお願いしました。
最初にI-Con大賞受賞を聞いたとき、「それってなに?」(笑)
――その現場でi-Construction大賞の優秀賞を受賞したそうですね。
菊地さん そうです。ほかに適当な現場がなかったからだと思います(笑)。とくに自社だけでICT施工をやっていたのは、ウチぐらいしかなかったですから。後で聞いた話では、国土交通省としては、もともと下請けにICT施工をやってもらうのではなく、元請けが自社でICT施工をしてほしかったそうです。
――いわゆる「なんちゃってICT施工」はダメよ、ということですね。
菊地さん まあ、そうですね。
――月並みな質問ですが、i-Construction大賞受賞は嬉しかったですか?
菊地さん 正直なことを言うと、最初に受賞を聞いたときは「それってなに?」という感じでした(笑)。表彰式をやるというので、霞ヶ関の会場に行ったとき、初めて「けっこうスゴい賞なんだ」と気づきました(笑)。
もう従来施工には戻れない
――それ以降の現場はすべてICT施工でやってきたわけですか?
菊地さん そうですね、全部ICT施工の現場です。7〜8現場ぐらいやりました。どれも国発注の河川の現場です。
――それだけの数のICT施工の現場を経験すると、かなり熟練しているのではないですか。
菊地さん そうかもしれません。機材なんかも改善されてきていますし。ICT施工はとにかくラクなので、従来施工にはもう戻れませんね。自分だけでなく、オペレーターさんなども作業がラクになったという話を聞きます。
――ICT施工だったから、特例監理技術者として2つの現場を同時にみることができた、という側面はありましたか。
菊地さん それはありましたね。ICTだからこそ、測量といった作業量自体が減りますから。従来の方法だと、自分が現場に張り付いていなければならないとか、本社から人を呼ばなければならないといったことも発生していたかもしれません。
――ICT施工のノウハウについて、部下などにレクチャーすることもあると思いますが、どんな感じですか。
菊地さん 基本的には、私のほうで設計データなどを組んで、あとの修正や出来形の評価などは部下にやらせるというカタチでやっています。ICT施工について経験のある者は、最初から仕事を任せています。おかしなところがないかチェックするぐらいです。役所との調整とかCIMのやり方とかに関しては、ちょくちょくアドバイスしたり、チェックしたりはしています。
――CIMも自社でやっているんですよね。
菊地さん そうですね。
現場のものづくりは、最後の最後は人の手が必要
――「ICT施工だけできても、一人前の技術者とは言えない」という話を聞いたことがあるのですが、この点どうお考えですか。
菊地さん それはそうだと思います。ICTはあくまでただのツールですから。現場のものづくりでは、最後の最後は人の手が必要になってきます。
――ICT施工以外の部分で、部下に教える上で心がけていることはありますか?
菊地さん ICTというツールの使い方をマスターするのは今の若い人は得意なので、そのツールをどうまとめて使うかといったところをちゃんと教えるようにしています。
――デジタルとアナログの違いについて、どうお考えですか?
菊地さん 個人的には、アナログはアナログでおもしろいですけどね。この場合のアナログとは、丁張りをかけたりとか役所と交渉したりといった地道な作業という意味ですが。若い人も好きになってもらいたいという思いはあります。ICTという道具を使うことで、仕事に余裕ができる分、地道な仕事にも手を回しやすくなるのかなと感じています。
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河川だけですかw