阪高を約3年間通行止めにして、メタルの高架橋に架け替えるという決断
喜連瓜破高架橋の架け替えが決まったのは2015年。工事手法の検討段階では、松原線の通行止めを避けるため、う回路を設置する案もあったが、う回路のための用地取得が困難であり、工期も10年以上に上ることから、選定作業は難航。
最終的に、松原線の広域う回路となる大和川線が2020年3月に全線開通したことが決め手となり、比較案の中で最も工期の短い松原線を終日通行止めした上での架け替えに決まった。通行止め期間は約3年間。
ピンとこない読者もいるかもしれないので蛇足を加えるが、都市高速事業者にとって、通行止めにすることはタブー視されている。それを踏まえると、今回の決断がどれだけ異例なことなのか想像がつく。
“転職を考えている方” まずはご相談ください【施工管理求人ナビ】
基本的に作業は空中。カギとなるのが仮設桁と移動作業車

喜連瓜破現場の空撮写真(阪神高速道路写真提供)
工事の受注者は、大成・富士ピーエス・MMB異工種JV。発注方式はECI(施工者が設計段階から関与する方式)をとった。
「大規模更新工事はその規模からも技術的難度が高く、限られた工期や多くの制約条件の下で、発注者だけで最適な工法を選定することが困難なケースがあります。社会的影響を最小限としつつ、確実に工事を完了させるために、初期段階から施工者の技術提案を募ることが最適という判断でした」(中田さん)と振り返る。
主な施工フローは、既設橋梁の撤去を行う移動作業車(4基)を取り付けるための仮設桁の設置→移動作業車の設置→既設橋梁(橋桁部分:中央径間、側径間)の撤去→仮設桁などの設備解体→既設橋梁(梁部分)の撤去→鋼製梁の架設→鋼製橋桁の架設となる。
冒頭にも触れたように、既設橋梁の撤去と新設橋梁の架設はJV構成者のなかで分担されており、前者は大成建設と富士ピーエスが、後者はMMBがそれぞれ施工する。なお、現場ではまだ撤去作業中だが、新設橋梁(鋼製)の工場製作はすでに始まっている。
この現場最大のポイントは、平時から交通量の多い一般道路への交通影響を最小限に抑えるため、昼間は車線を占有する交通規制を一切行わずに、基本的にすべての作業を空中で行うことだ。そのカギとなるのが、移動作業車(架設桁)の存在だ。
作業移動車は既設橋梁上に構築された全長165mの仮設桁(レール)上に設置され、橋軸方向に移動することができる。1.75m間隔でダイヤモンドワイヤーソーによる切断撤去を行うたび、作業車は次の位置まで移動する。
切断したコンクリートブロックは、クレーンで仮設桁の上に吊り上げられ、台車に載せてバックヤードまで運ぶ。1つ4~8トンに切り出されたコンクリートブロックを吊り上げるクレーン設備の能力は、安全率を考慮し最大16トンで設計されている。仮設桁と移動作業車などから成る設備類が完成したのは2022年末だった。

切断後、吊り上げられるコンクリート
最初に切り出すときがヤマ場だった

既設コンクリートの断面
今回撤去するコンクリート重量(橋桁部分)は約5000トン。全体を84ブロック(橋軸方向)に分け、さらに1ブロックを16分割で切断する。総個数は1300個程度。切断したコンクリートブロックは、粉塵の飛散を防止するため、ブルーシートで包む。
切断の順番は、大成建設本社の設計セクションが主体となり、形状や重量などを考慮しながら、あらかじめすべて決めている。撤去したコンクリートブロックについては、圧縮強度や物性などの調査も行っている。
コンクリートブロックは10トンダンプで運び出している。撤去のペースは1ブロック当たり3〜4日程度。切断作業よりも、移動作業車の移動ごとに生じる足場の組み立てや周りの養生などに時間がかかることがあるらしい。
「最初に切り出すときがヤマ場でしたね。弊社にとっても初めての作業だったからです。あらゆる作業ステップを事前に解析し、初期切断のような重要な工程はさらに詳細な検討を行い、想定外がないように準備して臨みました」(藤本さん)と振り返る。

養生後、搬出されるコンクリート