設計施工的発注で鴻池組が受注
しかし、これまでも腐食に対する対策は行われてきたが、水の浸透を食い止めるには至らず、対症療法的なものであった。そこで抜本的な対策が求められ、阪神高速リニューアルプロジェクトの一環として、鋼製基礎の更新工事が実施されることになった。
ただ、具体的にどうやって更新工事を実施するかを決めるのは、簡単ではなかった。基礎直下には地下函体がドンと存在するほか、地上には千日前通がドンと通っているからだ。それに加えて、まちなかの地下にはなにが埋まっているか掘ってみないとわからないという「都市土木あるある」があるからだ。
「この工事は、ボリューム的にはそれほど大きくないですが、内容的には盛りだくさんです。と言うのも、阪神高速の補修工事としては、地下を掘り返してまで構造物をやり替えたことは、ほとんどないからです」(田島さん)と話す。
そこで阪神高速は、まず施工設計的な業務を鴻池組に発注。施工手順などを検討した上で、比較的工事がやりやすそうな3基から、パイロット工事として発注した。受注者はもちろん鴻池組だ。3基分の施工請負金額は約42億円。工期は2020年12月〜2026年5月。なお、阪神高速としては、2025年4月開幕の大阪関西万博に間に合わせたい考えがあり、工事完了は前倒しされる見込みだ。
引き継ぎの際には「本当にわかったんか?」と念押し

函体上部に設置された支承。左は仮の支承。
施工フローは、支障物撤去・仮移設→舗装嵩上げ→土留(止水壁)設置→路面覆工・掘削→保護コンクリート撤去→支承改良→防食工→躯体コンクリート工→防水工→埋め戻し・路面覆工撤去→仮設備撤去・仮舗装→原形復旧になる。
取材した時点(6月上旬)は、一番進んでいるPN-01基礎が支承改良を行っている段階だった。工事全体の進捗率は47%となっている。前例のあまりない特殊な作業環境だけに施工管理には苦労しているようだ。
「この工事が始まってから1年半ぐらいは、通行規制をかけられる夜間しか作業ができませんでした。夜勤が続くと人は疲れますし、私自身夜勤に出続けるわけにはいかないので、シフトの引き継ぎなどを含め、いろいろ苦労しています。都市土木ならではの苦労だなと感じています。最近は、昼間、夜間両方で作業をするようになっています。若い職員同士が引き継ぎを行う際には、私も極力立ち会って、『本当にわかったんか?』と念押しするようにしています(笑)」(冨留宮さん)
どこの舗装屋さんもやったことがない40cm超の舗装嵩上げ

千日前通と作業ヤードの境界部分
これまでの工事でとくに大変だったのが、千日前通の舗装の嵩上げだった。本体工事に入る前の準備工だったが、工程を終えるまでに2カ月を要した。
「舗装の嵩上げは苦労しました。舗装屋さんと打ち合わせしながらやったのですが、交通開放しながら40cmほど嵩上げするという作業は、どこの舗装屋さんも施工したことがなかったからです。どういう方法で嵩上げすれば良いのかというところから、何度も打ち合わせをしました。嵩上げした後、掘削しやすい舗装にするにはどうするかという問題もありました」(冨留宮さん)
掘削しやすい舗装にするため、15cm(大阪市の標準仕様)ある舗装を一旦10cmにする→5cmずつ舗装を積み重ねる→厚さが25cmを超えたら、積み重ねた舗装を全て撤去し、路盤(砕石)の上に10cmの舗装をかける→さらに5cmずつ積み重ねる→舗装の厚さが再び25cmを超えたら、また路盤(砕石)と10cmの舗装に置き換える。これを繰り返した。
場所によって深さが異なるため、深いところから順番に盛り上げて、浅いところと擦り付け、盛り上がりすぎたところは取る、という作業も繰り返した。昼間は全線、夜間も通行開放する必要があったからだ。一連の作業は、歩道と車道の横断勾配も考慮しながら行った。
「かなり苦労しました」(冨留宮さん)と振り返るが、本当にその通りだったのだろう。