工務店業界の受注は二極化
現状、大手ハウスメーカーや工務店でも、確実に受注を獲得しているところとそうでないところに二極化している。例えばある大手ハウスメーカーでは、住宅展示場での受注は減少したが、その代わりにウェブ経由の受注を大幅に伸ばした。コロナ禍での受注戦略をウェブと紹介の2点にシフトしたところ好結果を残せた事例があった。また最先端ツールを駆使したオンライン集客、商談も展開している。そこで工務店としても「受注力の強化」「メディアミックスによる集客力の強化」「付加価値による販売単価のアップ」の3点の経営戦略が必須と指摘した。つまり、工務店業界としては少人数かつ高生産の経営戦略が重要になるわけだ。そして、今後の工務店業界として重要な施策として「受注力付ける(一人当たりの売上の伸ばす)」「モデルハウスを持たない営業手法の実践」「高単価のデザイン住宅を販売」「少数精鋭の部隊を設置している」の4点を挙げている。
Style Designの稲葉龍也会長は下請けの大工からスタート。限界を感じたときに、ナックにと出会った。そこで経営の「イロハ」を学び、当時社長であった稲葉氏、現場監督そしてパートの3名という少人数体制にもかかわらず12棟の受注に成功した。その後、「少人数と多店舗展開」を軸とし、今では高単価のデザイン住宅を年間50棟の受注に成功する工務店として成長した。
なぜ茨城県を中心にモデルハウスなしで受注を確保しているのだろうか。同社の創業当時をさかのぼってみると、2006年の同社の前身(イナバ総合建物)の時代では、社長のマンパワーでの経営、低単価(1300万円台)、1店舗のみでの活動であった。現在のStyle Designは、社長がいなくても回る仕組みを構築、ローコスト受注をやめ、今は高単価での受注にシフトし、4店舗で展開するなど創業と現在ではずいぶんと改革した点が多い。時代や顧客の変化に応じてスピーディーに会社が変化をし、トライアンドエラーを試み改善した結果、茨城県を中心としたエリアから選ばれる工務店づくりに成功した。
Style Designの成功ノウハウを中小工務店に提供
そこで今回、ナックは、Style Designのノウハウをより拡大することを決定。同社と業務提携を結び、メタバース展示場にも展開できるデザイン性の高い規格住宅と集客・接客ノウハウを詰め込んだ中小工務店向けのノウハウ商品「i-Style(アイスタイル)」の提供を開始した。
Style Designの規模は4店舗、スタッフ15名で売上高は15億円。ナックとしてはいきなりここまで目指すのではなく、まず1店舗をスタッフ3名で確実に運営し、年間10棟規模を受注できるような高生産経営を目指すべきと提起した。

Style Designが成功した要因
一方、大場代表は経営には、①社会性(社会的課題を解決し、社会に受け入れられるビジネス)、②革新性(新たな価値・差別化ビジネス)、③事業性(健全な収益性のあるビジネス)の3つの要素があるとした。「i-Style」はこの3つの要素をどうカバーしているのだろうか。まず社会性は、モデルハウスをもたないことがStyle Designの大きな特徴だ。それは過剰供給をしない会社につながり、カーボンニュートラルに対しての意識づくりを全体で行っている。
次の事業性では、デザイン性の高い住宅を供給することで、正社員とパートも含めた強い組織を構成していく。3番目の革新性だが、これはDX(メタバース展示場、バーチャル展示場)による接客を展開し、新人でもできるデザイン住宅のプラン提案を仕組化した。
社長のマンパワー経営への依存から脱却を
それでは、「i-Style」の商品内容を具体的に見てみよう。まず強化項目の一つ目としては、一つの目標に向けての組織づくり「チームビルディングの強化」がある。これは工務店でよくありがちなことだが、社長依存型のマンパワー経営も決して少なくない。このマンパワー経営の脱却を図り、チーム戦での受注戦略を自社に落とし込み、一人ひとりが機能する組織づくりをする稲葉会長方式のチームビルディングを研修で学べる。稲葉会長はワンパワーのみの経営から脱却できた理由を「仕組みの上に人を乗せた」と語る。この形式であれば100点は取れなくても70~80点の経営で進められるという。もちろんそれは容易にできるのではなく、「トライアンドエラーを繰り返した」と稲葉会長は当時の試行錯誤を振り返る。
次に「i-Style」の特徴として注目住宅、規格住宅のいずれも対応できるデザイン住宅を実現。規格住宅では、クラシック(カフェのようなくつろぎを自宅でも感じられる)、カントリー(ラフに使える土間空間をそのまま室内に取り込む)、エタージュ(ワンフロアで家族がつながり、動脈を短く過ごせる平屋)、リトリート(南面の中庭とつながるようにLDKを配置)をラインナップとして取りそろえた。「i-Style」には、テキサス大学終身教授資格のある渡辺純氏監修の高いデザイン性を実現した規格住宅が入る。今後追加していく注文住宅のラインナップにおいても監修を予定し、より一層「i-Style」をアップグレートしていく予定だ。

「デザイン性が優れた規格住宅の図面データ」などのノウハウを盛り込んだ商品「i-Style(アイスタイル)」を提供開始
また規格住宅以上にこだわりの住宅を希望する工務店に対しては4カテゴリー(ヴィンテージ・ナチュラル・リゾート・ホテル・シンプル)の10種類の注文住宅も実際の図面や参考実行予算と合わせて用意した。
今、デザインに対して顧客からどのような声が上がっているのか。稲葉会長は、「特に多いのはオリジナリティがほしいという声だ。数千万円の買い物であるため、それに見合う高級感と居心地の良さを求めている。最近の顧客はデザイントレンドにすごく敏感で、細心のライフスタイルやテクノロジーが盛り込まれたデザインを魅力的に感じている。だからこそ中小工務店も顧客のニーズに応じたアップデートされたデザイン提案が求められている」と解説する。

注文住宅の実際の図面や参考実行予算も用意
デザイン力の重要性が今後のトレンドとなっていく中で、今回の新商品である「i-Style」は中小工務店にとってどのような効果をもたらすか。大場代表は「まず一つ目は即効性、次はブランディングがポイントになる」と大きな期待を寄せる。
このほかDX接客としては、全規格住宅のVRを使用することで実際のモデルハウスを建設しなくとも顧客に疑似体験を提供。また全規格住宅と一部の注文住宅がバーチャルハウスとして設置している「メタバース展示場」を使用することも可能で顧客に説明しやすい仕様になる。
今回のノウハウ商品「i-Style」の特長は主に5点ある。① 経営の基本である「ヒト・モノ・カネ」の強化②チーム、組織づくりの構築③ Style Designの商品・集客・営業を自社へ④エリアでお客様から選ばれやすい工務店経営⑤稲葉会⾧による経営指南を受けることが可能になる。
今、中小工務店業界は様々な外部的要因で苦境に立たされている。そこで成功事例をどん欲に吸収し、自社の成長を促すことは有力な戦略で、「i-Style」は有力なツールと言っても良いだろう。