2×4工法の賃貸住宅着工は安定傾向も…
大東カナダトレーディングの加藤社長は記者会見で「住宅市場の動向」「木材調達リスク」「カナダ現地法人の目的と役割」の3点を解説した。
まず「住宅市場の動向」では、持ち家・賃貸住宅着工戸数の推移を2008~2022年で見ると緩やかに減少し、2022年度の住宅着工戸数は2021年度比で0.6%減の86万戸数だった。
賃貸住宅着工戸数の推移に絞ると、2000~2022年度全体から見ると減少傾向であるが、ここ数年は安定して推移し、2022年度の戸数は前年比5.0%増の34万戸で、2023年も安定傾向は続いた。また、2×4木造住宅着工戸数の割合と推移を見ると、20%前後で安定的に推移している。大東建託の2023年度の受注高累計(4月~11月)は、回復傾向が強まり、前年比27.2%と増加した。

2×4木造住宅着工戸数の割合の推移(2023年) / 出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」をもとに大東建託が作成
SPF製材は減少傾向、価格は乱高下
次の「木材調達リスク」の最大の影響は地球温暖化だ。大東建託では木材の多くはカナダからの輸入が多く、中でもBC州産の木材を多く使用している。しかし、カナダは例年5〜10月にかけて西部中心に山火事が頻発するなどのリスクもある。特に2023年のカナダの山火事による焼失面積は近年で最も被害が大きく、1995年の2倍以上で日本の国土面積の約37%にあたる。「専門家は、この山火事発生は干ばつと気温上昇を要因に挙げている」(加藤社長)
一方、2×4工法に適した木材であるカナダSPF製材量は2016年には6000万m3だったが年々減少し、2022年には4500万m3を割った。今は価格が安定したものの、2020~2021年には二度にわたりウッドショックが発生し、製材品の価格は不安定である。今の価格は一服傾向だが、今後とも価格が安定するとは限らないのが現状だ。
「2×4工法に適しているカナダのSPF製材は、虫害(ちゅうがい)、山火事、伐採制限により減少傾向にある。赤い折れ線グラフ(※下記図)の部分では、北米の製材需要が増加したことにより製材品の価格が乱高下する不安定な市況が続いた。大東建託にとって、カナダでの安定した木材調達は不可欠であり、そのためカナダ現地法人を設立することになった」(加藤社長)

出典:大東建託
新会社の事業は1月22日から開始し、資本金は1万アメリカドル(日本円では約143万円、2023/12/19時点のレート)で、事業内容は建築用木材の購入や輸出販売業。カナダ事務所代表は佐藤洋生(ひろお)氏が就いた。佐藤氏はハウスメーカー勤務後、2016年に大東建託に入社。現地の製造所とのネットワークを広げている。
「前職も含めて15年ほど木材の購買に携わっている。現地では木材の価格交渉、木材の品質の確認などに力を入れたい」(佐藤氏)

カナダ事務所代表に就いた佐藤洋生氏
「SPF製材が一時的にせよ、なぜ乱高下したか。北米ではコロナ感染防止のため、自身の家をリフォームするにあたり、ホームセンターで材料を購入した。アメリカのバイデン政権では給付金を配布したが、第1回目の給付金の使い道は自宅のリフォームだった。製材所はホームセンターに卸したほうが儲かるので、価格が高騰した。しかし2回目の給付金ではリフォームに使われず旅行関係に使われたので、価格は思った以上に上がらなかった。こうした情報は日本にいるだけでは分からない」(加藤社長)
現地で情報収集し、的確な判断を下すことがウッドショックにおける大きな教訓の一つとも指摘した。