株式会社アンドパッド(東京都千代田区)は、2016年3月の施工管理アプリ「ANDPAD」のサービス提供以後、建設現場のありようを一変させた。それまで紙、電話、FAXがコミュケーションの中心だった建設業界だったが、住宅向けには多岐にわたる機能を「All IN ONE」サービスとして、ゼネコン・サブコン向けにはあらたな機能を技術者と技能者のコミュニケーションと業務効率化機能を付加したソリューションを展開し、建設業界のDXに大きく貢献した。
2024年1月には、幅広い業種で勤務する20~69歳の建設業従事者に対して、建設業の時間外労働の上限規制の厳格化について認知・対応状況の独自調査を実施。「認知している」の回答は67.1%だが、「残業削減の効果あり」との回答は23.4%に留まった。一方で経営層からの「DXが重要」との回答は49.2%と高く、DXによる業務効率化は現場層に加えて経営層からも高い要望があることが分かった。
建設業の働き方改革が待ったなしの今、アンドパッドはどのようにツールを進化させ、業務効率化を進展していくのであろうか。事業戦略本部マーケティング部マネージャーの長濱純人氏に話を聞いた。
経営層の約半数が「DXの重要性」を認識
――建設業界の2024年問題に関して1月にアンケートを行いましたが、結果のポイントは。
長濱 純人氏(以下、長濱氏) 「時間外労働の上限規制厳格化」の認知度は67.1%で、とくにゼネコンでの認知は高く、81.0%以上の回答者が制度を認知していると回答しました。ゼネコンの認知度が高い一方、工務店やリフォーム企業の協力会社と呼ばれる塗装工事会社、配筋・鉄筋工事会社などの専門工事業者は低く、全体の数値を押し下げています。ただし、今回のアンケートは2023年末時点の数値で、4月以降の数値は高まっていると思われます。
一方で、残業抑制へは全体の43.9%が取り組んでいる状況で、その効果を実感しているのは23.4%と約1/4に留まっています。また、残業を45時間以上行っている回答者のうち、50.7%以上が残業を減らすための取組みを行えていないと回答しています。
ただし、残業時間を削減するために、労働時間の管理・残業時間の管理、週休2日制の導入などを行っている企業も多く、さらに経営者の約5割はDX化について意欲的です。

時間外労働の上限規制に関する独自調査 / アンドパッド調べ
――この結果をどう捉えていますか?
長濱氏 ゼネコンの認知度が高い一方、工務店やリフォーム企業の協力会社と呼ばれる塗装工事会社、配筋・鉄筋工事会社などの専門工事業者は低く、全体の数値を押し下げています。ただし、今回のアンケートは2023年末時点の数値で、4月以降の数値はさらに高まっていると思われます。
また、残業削減の効果を実感している方は23.4%と1/4ですが、DXツールを導入し、抜本的な改革を進める建設会社でも改善に至るには少し時間がかかります。ANDPADを導入した企業も、翌日から飛躍的に業務が改善されるわけではありません。書類作成業務が半分に削減したといった目に見える効果は、導入後の半年後や1年後と時間がかかります。この数字は、将来を見据えて先行したDX投資を実施したからこそ、足元で恩恵を受けた結果です。効果が出ていない建設会社は、効果が生じるまでDX企業と長く根気よくお付き合いいただくことが肝要だと考えています。
勤怠管理をしっかりと行って残業を減らし、夕方に社員に声がけをするなど、従業員に早い帰宅を促す経営者もいますが、より抜本的な対策も考える必要があるでしょう。DXツールを活用し、業務フローを改革し労働環境の改善に努めることが大切と認識される経営者が半数と予想よりも高い数値だったことはポジティブな結果でした。