建設業界では、人の入れ替わりが激しく、中途採用でも年がら年中、新しい人材が入ってくる。右も左も分からない未経験者もいれば、人間関係などの理由から転職をしてきた人など、タイプは様々だ。
今回は実体験をもとに、新人が入ってきた時に感じた、建設業界の現場で働く人間の頭の固さ(頑固さ)について話をしようと思う。
頑固な人間ばかりの建設業界
とある現場で所長のサポートとして業務をしていた頃、1人の中途採用者が現場に配属された。彼は23歳で、もともと土木作業員として働いていたが、施工管理をしたいという理由から、私の会社に転職してきた。
彼が配属された時、現場ではコンクリートブロック積工を行っていたのだが、下請けの作業員の方々はブロック設置未経験者であった。
現場でのブロック積に、要領も分からずかなり苦戦している様子だったが、私たち監督側の人間も自分で施工したことがなかったため、横から口を出せずにいた。すると、現場でしばらく作業を見ていた新入社員が口を開いた。
「ブロックを積む順序を変えると施工しやすくなると思いますよ」
話を聞けば、彼はもともと前職の時にブロック積を行っていたそうで、作業員の施工手順に違和感を覚えたため、発言したとのことだった。
それまでは、裏込め砕石を投入してブロックを積み、胴込コンクリートを打設していたのだが、彼から言わせれば、ブロックをついてから裏込め砕石を投入し、その後固めて胴込コンクリートを打設という順序のほうが、圧倒的に積みやすいし、施工スピードも上がると提案してくれた。
【PR】転職に成功する施工管理と失敗する施工管理の「わずかな差」
“新人”という理由だけで、聞く耳を持たない
この提案を聞いた現場の作業員たちは、ムッとした表情で「裏込めを先に投入しなければ、ブロックが後ろにずれてしまう」と答えた。
しかし、新入社員はひるむことなく、「ブロックが後ろにずれないようにキャンバーをかませておいてから、裏込めを入れるんです。ブロックは自立するように作られているので、先に積んで勾配や位置を合わせておいたほうが圧倒的に積みやすいですよ」と返した。
彼の言うことは理にかなっている。試しに1段だけその方法でやるように指示してみたところ、これまで手こずっていたことが嘘のように、すんなりとブロックが設置できたのだ。
それでも作業員たちは納得いかなかったようで、何かしらの口実をつけ、従来のやり方で施工を進めていった。
その姿を見ながら、新入社員のやり方で施工をしていれば、工程が結構変わっていたのではないかと何度も思ってしまう自分がいた。
この現場での経験は、私にとって非常に大きな学びとなった。
作業員も監督も施工未経験…?
タイトルの「新人の意見に耳を傾けない」という話は、建設業界だけでなく、さまざまな業界で発生しているように感じます。
ただ、仕方ない理由も2つあるように思います。
1、「正しい意見」ではなく「正しそうな意見」が採用される。
コミュニケーションは、言っている内容は勿論重要ですが、誰が話すかも重要だと思います。たとえ建設業界でも、「すべての新人」の意見が採用されないわけではないと思います。
ベテランや役職など、新人にはどうすることもできないものもありますが、日頃からの職人との人間関係の構築や、その人の過去の実績や、その現場での働き方などで、職人と信頼関係がつくることができれば、有効なコミュニケーションが生まれる可能性もあるかもしれません。勿論、ダメなものはダメかもしれませんが・・。
2、「責任」の所在
新人の指示通りに仕事をして、万一失敗した場合、誰が責任を取るのかという問題があります。職人の立場に立つと、従来のやり方で施工した方がリスクが小さいと考えることも理解できなくはありませんし、今回のケースでは未経験者が多く、そんな中で誰も知らないやり方を採用するのはチームとしてリスクがあると考えることもやむを得ない事情があるように感じます。
「新人の監督の言うとおりに施工したから失敗した」なんて責任転嫁されることが一番困りますから、口を出すのであれば、「失敗した時の責任は負う」覚悟も必要なように感じます。
3 まとめ
確かに、建設業界には頑固な方が多いような肌感覚はありますが、私には、これはタイトルの「建設業界の悪習」ではなく、「新人」が信頼されるためには何が必要かという問題であるように感じるのです。