原寸図の打ち合わせ
まだ設計者との第一回打ち合わせ用の図面を描いている段階でも、寸法を入れておかないと、立体的展開を想像できないので、次の段階に進まない。設計者との第一回打ち合わせは、担当の設計者はもとより、現場所長も出席する場合もあるし、設計事務所の社長も出席する場合もある。いかに重要な図面であるかが分かると思う。
でも主役は、図面を描き、施工する協力業者の現場代理人兼職長である。この人の描いた図面一枚一枚を、皆で検討していくのだ。打ち合わせは深夜にも及ぶ過酷な状態となり、夜食を食べながらの打ち合わせとなることもある。
図面の枚数も多く、その日では完了しないので、設計事務所側も、ホテルを予約して、万全の体制で臨むこともある。翌朝9時から再開となり、設計事務所は「さあ、やりますか」と腕をまくる。主役の現場代理人さんは、フラフラ状態である。私もフラフラだ。こうして第一回目の原寸図打合せが終了した。次回の打ち合せ日時を決めて、お開きとなる。次回は施主様にもご出席を願い、実物の見本や3D映像にて説明せなばならない。修正図面作成、 追加図面作成、3D作成と超忙しい。ついでに職人の手配もせなばならないのが現場代理人だ。
第二回打合せは、原寸図、見本、3D映像を揃え、施主(旅館の女将、社長様など)の出席のもと、前回の出席者も交え、打ち合せ会議が開催される。そこで女将からイメージ違うとの意見がでれば、全てが やり直しとなる緊張の一瞬であるが、努力が認められて晴れて承認されれば安堵となる。神経がプッツンと音をたてて切れるんじゃないかと思う瞬間だ。
これで造作材発注、加工となる。原寸図を元に加工図を作成するのであるが、簡単に言えば、 原寸図に加工番号を記入するだけである。図面の材料一本一本に番号を書き入れ、数量表を作成するのだ。長さ、幅、高さ、材種、本数、部屋の番号を記入する。材料を現場に搬入する時に部屋を間違えないよう、最新の注意を払い、数量表を参考に部屋に運び入れるのだ。大工さんに、原寸図と数量表をセットにして渡し、間違いがないように作業を開始していただく。予備の材料は一本もありませんので、よろしくお願いします!
芸術品の原寸図もある
他にも原寸図を利用して、下地の軽鉄材の位置や、畳、建具、PBの貼る位置、コンセントの位置、 浴室、便所のタイル割りなどの割り付け、空調吹き出し口の位置、部屋入口の土間の石貼、 火災報知、スプリンクラーの位置、左官工事、塗装工事などを各専門業者の施工図作成に反映させ、 取り合いに不都合の無いように、検討調整してもらう。
場所によっては同時作業か、先に先行工事をしてもらうなど、工程管理にも利用される。竣工してからも、メンテナンスなどの対応にも利用できる。原寸図をA3に縮小して製本し、技術資料として保管する会社もある。手書きの場合で有名な数寄屋建築の原寸図は、芸術品としての価値さえある物もある。
原寸図の世界は奥が深いのだ。