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現場を変えていく: テクノロジーが建設業を変えるとき

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公開日:2017.09.05
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建設業は「熟練」が大好き

建設業を生業にしている人は、熟練という言葉が大好きだ。熟練の建機オペレーター、熟練の左官、熟練の鳶、熟練の現場監督……とにかく自分の腕に磨きをかけるのが建設業という雰囲気がある。一人前となるためには5〜10年の時間をかけて、自身の技を磨いていく必要がある。つまり長い年月をかけて得られる熟練という称号こそ、建設業における栄誉なのである。

日本人の国民性として、ひとつの技を生涯をかけて極めることに美徳を感じる傾向が強い。このことは言葉の使い方を考えれば客観的に証明できる。例えば、アラスカに住む先住民族エスキモーには、日本語の「雪」に相当する単語が52個ある。これはエスキモーにとって雪が身近で、生活習慣に非常に強い影響を与えるために生じた現象である。
これと同じような言葉は日本語と英語の間にもある。例えば、コンピュータやAIなどのことを、英語では「テクノロジー」と表現する。テクノロジーを日本語では「技術」と表現する。しかしこの「技術」という言葉に相当する英語は他にもある。それは「スキル」だ。スキルとは「個人が習得した技術」のことであり、技能とも呼ばれる。一方、「テクノロジー」は具体的な「もの、こと」を示す言葉で、発明品などを指すことが多い。建設業の場合、職人のことを「技能者」、現場監督のことを「技術者」と呼ぶことはあるが、「技術力」などのように「技術」がテクノロジーのことを示しているのか、「スキル」のことを示しているのか分かりにくい言葉もある。

また「あの人の技術は真似できない」などのように、口語では技術をテクノロジーなのかスキルなのかで区別しない(ちなみにこの場合の技術は当然「スキル」を指している)。つまり、日本人は技術を「スキル」と「テクノロジー」を同一視する傾向がある。背景には日本の歴史的な成功体験が、両者によって支えられてきたことが大きい。

日本を成長させた「カイゼン」と、その歯車の崩壊

資源の少ない日本にとって製造・加工の技術が経済成長を支えるリソースとなったことは想像に難くない。
例えば、同じ製品を作っている人達の中で、突出して「上手」に製品を作る人がいたとする。そういう人は周りから優遇され、職人や匠などと呼ばれるようになる。しかし工業化するためには、その職人の技を他の人も出来るようにしなければならない。そこで、その職人がどのように製品を作っているのかを観察し、マニュアルにしていく。そして他の人は、そのマニュアルに従って物を作ることによって、品質の高い製品をみんなが作れるようになる。これは個人のスキルをテクノロジーに転換した一例である。

このプロセスを繰り返した結果、日本は産業立国として高度経済成長を遂げた。さらにスキルをテクノロジー化する仕組みは「カイゼン(改善)」と呼ばれ、諸外国の手本となった。しかし、グローバル化とコンピュータ技術の成長の速さは、カイゼンの性質と一致しなかった。

カイゼンは年月を必要とする。まず反復作業を通じて、熟練の作業員を生み出さなければならない。さらにその人の行動を観察し、改善点を見つけ出し、それを明文化しなければならない。一方でグローバル化が進むにつれて、確立された新しいテクノロジーが日本に輸入されるようになった。テクノロジーの到来はカイゼンにより成長してきた日本人の成功体験とは相反するものであった。

しかし製造業では、グローバル競争の激化により否応無しに、新しいテクノロジーを取り入れる必然性が生じた。そのため、新しいテクノロジーに寛容な土壌が整い、さらに積極的にテクノロジーを取り込もうとする意識が生まれた。その一方、国内需要に頼り切ってきた建設業では、カイゼン文化に依存し続けることになった。この名残りは、建築士の製図試験が未だに紙であったり、確認申請や竣工図書などが全て定められたテンプレートで記載されていることに見ることができる。

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この記事を書いた人

三ツ橋 象平
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1987年生まれ。青山学院大学大学院理工学研究科修士。株式会社大林組に入社。設計・施工に従事後、システムの企画・開発を行う。その後、オートデスク株式会社に入社。テクニカルスペシャリストとして従事。現在は外資系コンサルティングファームにて建設業、製造業のコンサルティングに従事。
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