長野市の建設業における新規求人に占める新規求職者の割合は5.48倍
「長野市建設労働者就業支援補助金」について、担当部署である長野市商工観光部商工労働課雇用促進室と、長野県内の建設企業73社が加盟する一般社団法人長野市建設業協会(伊藤隆三会長)に話を聞いた。
施工の神様(以下、施工):「長野市建設労働者就業支援補助金」創設された背景は?
長野市:まず「長野市建設労働者就業支援補助金」を創設するにあたり、各地方公共団体のホームページを調べたところ、前例のない制度であることが分りました。長野市を管轄しているハローワークは3カ所あり、平成29年4月時点の建設業における新規求人に占める新規求職者は5.48倍。他業種のは平均1.45倍なので、建設業は飛び抜けて高い値です。長野市建設業協会から「建設業の人材確保に向けて、行政として対応をお願いしたい」という要望書をいただき、建設業の人材確保や移住促進の狙いから、長野市建設業協会とも話し合った結果、この「長野市建設労働者就業支援補助金」制度を創設しました。
施工:具体的には、どのような人材を求めていますか?
長野市:50歳未満で資格や現場経験のある施工管理技士、型枠・大工・鉄筋・左官などの専門工事に従事している方を求めています。実は、60歳まで認めても良いのでは、という意見もありましたが、長野市の別の補助制度である移住者起業支援金で年齢制限を50歳未満に設定していたので、それに合わせた形です。施工管理技士や建設技能労働者については、長野市でも高齢化が進んでいることも把握しています。
施工:これからは長野市では、どのような工事が増えてきますか?
長野市:駅前の再開発が終わり、一服感があります。しかし、これから公共施設適正配置の工事や、橋梁などの長寿命化工事も控えており、今後、一定の割合で公共工事は出てきます。建設業の人材不足は深刻です。
転職志望の施工管理技士は、幸福感が高い長野市へ
施工:移住希望の都道府県としては、沖縄、北海道についで、長野県がランクインしますので、施工管理技士の長野県に対する移住ポテンシャルも期待できるのでは?
長野市:先日、東京23区内で大学の定員増を認めないという方針が打ち出されましたが、東京一極集中が好ましくないという政府としての姿勢だと考えています。長野県でも東京の大学に進学した方は、長野県に戻らずそのまま東京に定住する方が多いという実態があります。これからは若者に限らず、多くの方に選ばれる地方公共団体を目指すことが必要だと痛感しています。
「長野市建設労働者就業支援補助金」では1年以上就労することを求めていますが、1年と言わず、ずっと定住して欲しいというのが長野市の願いです。
長野市としては、長野市建設業協会の会員建設事業所に対し、就職した施工管理技士や建設技能者の方が離職しないような自助努力につとめて欲しいと願っています。
施工:転職を考えている施工管理技士に伝えたい長野県の魅力は?
長野市:もし、お子さんや奥さんがいらっしゃる施工管理技士や建設技能者であれば、一家総出で長野市に移住いただくのが本当に望ましいです。
長野市では、夏冬の総合国体も予定され、ウィンタースポーツも盛んで施設も揃っています。星も綺麗で少し車を走らせれば、天文観測ができる環境もあります。夏は湿気も少なく、カラッとした暑さで過ごしやすく、快適に暮らせます。今回の補助金をキッカケに是非、長野市に定住を真剣に考えていただきたいですね。
施工:東京圏から長野市に移住すると給与は下がるのでは?
長野市:賃金に関しては長野市が長野市建設業協会に申し上げることはできませんし、それは各建設会社での労使関係によります。ただ、福利厚生など「働き方改革」を促進し、建設業を変えていくことが出来ればいいと考えています。それと同時に、長野市には前述のように、豊かな自然環境に恵まれ、賃金以上の魅力があると思っています。
施工:東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた動きですか?
長野市:東京オリンピック・パラリンピックの工事が一服し、東京圏のハード部門の仕事が終わったとき、Iターン、Uターンの候補地として是非、幸せが実感できる長野市を選択して欲しいです。
今年の10月21日には、東京の有楽町マリオンで「長野地域合同就職フェア」を開催し、「長野市建設労働者就業支援補助金」のPRも行います。今からポスト五輪を見据えて行動し、今回の利用状況を踏まえ、今後、建設業以外の異業種にも適用するか検討します。