都心部におけるドローン活用の壁
しかし、三井不動産が発注した全ての建築現場でドローンが飛ばさせるかといえば、すぐには難しいようだ。
「現段階での難しい問題は、都心の建築現場でドローンを飛ばしている現場がほとんどない、つまり前例がないということです。郊外現場に比べて制約が多いことは今回、身をもって感じました。」(能登谷主事)
ドローンを飛ばすためには国土交通省に事前申請が必要だ。しかし許可が得られれば、すぐ飛ばせるかと言えば、都心部の現場付近にはプライベート性の高いホテルがあり、国の重要施設などもあるため、近隣への説明も容易ではない。今回の実証実験の現場も、日本銀行に近かった。
「都心部では近隣の方に説明し、納得感と安心感を醸成することが課題です。デメリットがあるのでこの現場では導入できないという声があれば、それにどう応えていくか検討しなければなりません。」(能登谷主事)
都心部でのドローン活用はまだ課題も多いようだが、三井不動産は郊外でも三井アウトレットパークや物流施設、マンションも開発している。そこであれば可能ではないのか。
「三井不動産の開発物件でどこまで対応できるかはまだわかりません。しかし、郊外の平面的な開発物件であれば、ドロノミー社のドローンによる工事進捗管理は導入しやすいと考えています。
今後、どの物件でマッチングしていくかは、ゼネコンの意向も踏まえて検討していこうと考えています。」(能登谷主事)
三井不動産のベンチャー企業との共創
三井不動産のブランド力、資金力を背景にしたベンチャー企業のバックアップ体制は魅力的だ。特に建設業界での協業は、与えるインパクトも大きい。
三井不動産は、今回の実証実験において次のようなコメントを出している。
「今回の実証実験はドロノミーの日本進出に向けた支援の側面もありますが、同時に、当社や鹿島の既存の都市開発事業における進捗管理の効率化、安全性の向上の実現に向けたテクノロジーの活用について検討を進めていく大きなきっかけにもなっています。」
三井不動産の新たな挑戦は「オープンイノベーション」だという。それは自社単独で実施するのではなく、異業種や海外業者のベンチャーも巻き込んだ新たなる潮流を生み出すことである。ベンチャー共創事業部は、まさに終わりなき革新に向け、ブラッシュアップの追求に大きく舵を切っている。
能登谷主事はインタビューの最後にこう締めくくってくれた。
「建設業に限らず優れた技術やサービスを保有するベンチャーであれば、われわれはパートナーとしていつでも支援する用意があります。自分にはこれだけの技術やノウハウがあるというベンチャー企業の方がいれば、ベンチャー共創事業部にご連絡ください。
また、ドロノミーは日本に営業拠点がありませんので、ご興味のある方は、ベンチャー共創事業部までお問い合わせください。」
三井不動産がどこまで建築現場に変革をもたらすか注目だ。Google Chromeでドローンの3Dデータを共有できる工事進捗管理システムがスタンダードになれば、建築現場における施工者・発注者間のやりとりがよりスムーズになるだろう。
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