待ち遠しい測量作業日
草いきれのする、6月の日曜日。この日は、先生5名と父親応援団10名で、ヤギ小屋を囲っているトタン板にペンキを塗った。その作業中、私は言った。「団長、そろそろ測量したいのですが・・・」「待ってました。ヒロさん、みんな手伝うっていってますよ」。
私は自動追尾のトータルステーションを使ってワンマンで測量をする考えだった。30分程度で作業は完了するのだが、・・・ここは手伝ってもらったほうがよいと思ったので、2人の手を借りることにした。
測量作業は7月2日の日曜日に決定。本番の白線引きは7月22日、土曜日。その日が待ちどおしく思えた。
「凄い~、かっこいい~」土木技術者の測量技術に感動
風薫る朝、測量作業日和となった。集合の約束は8時で、私は7時30分に現地に着いた。団長とAさん、そしてM先生もすでに駐車場にいた。3人とも作業着を着てやる気満々。
「測量なんて初めてです、私にできますかね」と団長はいう。「これ、プリズムっていうのだけど。私がこれから、チョークで記しをつける所に立てるだけですよ」とアドバイスした。
「巻き尺とかで測らなくてわかるのですか?」とM先生が聞く。「この機械で距離とか高さとかわかっちゃうのですよ」と私。「へぇ~ハイテクなのですね」。
建設現場では当たり前なのだが、先生に褒められると、少し鼻が高い気分になった。私がマーキングした現況の白線や変化点に、団長は正確にプリズムを立てていった。途中から他の団員や保護者も合流して作業を見守る。興味津々でトータルステーションの画面をのぞき込むと、測ったとおりの形がディスプレイに映し出される。
「凄い~、かっこいい~、もう図ができてるの~」と、みんな感動、感心している。私はつい調子に乗らされてしまう。どうだ、これぞ土木技術者の真骨頂だ。教頭先生からはドリンクのサービスで、いたりつくせり。こんな測量なら毎日でもやりたい。
CADで書いた普通の計画図も感心される
測量作業の後、団長と白線の幅や長さを参考にするため、コンビニやスーパーの駐車場をまわった。白線の幅は15㎝、駐車幅は2.6mと決めた。CADで現況と計画の図を書いた。作図時間は2時間。
後日、これをベースに団長が先生達と打ち合わせをしてくれた。結果は計画図とおりで施工。建設現場ではごく普通の図面だが、感心されたようだ。既設の白線は専門業者に消してもらうこととした。
「白線を引くより先に、白線を引く位置を出した方が、作業日はスムーズですよ」と、私は団長に無料通話アプリで連絡をとった。返事は「オッケー」と大きいスタンプ。
7月16日の日曜日、来週の白線引き本番を前に位置出しを行った。この作業にもM先生や他の一員も参加してくれた。ヤギ小屋を設計した建築士のSさんも駆けつけてくれた。「雨が降るとマーキングがきえちゃうから」と慣れた手つきで充電ドリルを使って舗装にスクリュー釘を打った。さすが建築士、発想が土木と違う。
先生と学校の倉庫へ入って、ペンキや刷毛の準備も済ませた。懐かしい香り。足りない材料はホームセンターで買い出し。これで準備完了。後は来週の本番を待つだけだ。
こういうの、いいですね!
土木は人々のために行う仕事。
派手ではない、縁の下の力持ち。
一見人から見えにくい。でも絶対必要。
これこそ、土木の魅力。
まあ土木作業員なんて世間一般では冷ややかな仕事ですもんね。哀れだからたまにはこういった場で誉めてあげてやるのが情けでしょう。