とんでもない変更、追加があった国発注工事
――宮村さんが大変だった現場は?
宮村 国発注の工事で、5年くらい前に、由良川で築堤をつくりながら、それを乗り越す道路を同時につくる現場に、現場技術員として携わりました。金額の割には、工期が短い工事で、工期に間に合うかどうかギリギリの闘いでした。朝早く現場に出て、ちょうど出たての自動追尾の機材を使って、夜遅くまでずっと丁張りかけたり、写真を撮ったりしていました。
――工期が短いというのは?
宮村 通常であれば、半年は欲しい現場でしたが、4ヶ月ほどの工期でした。
福井 地元から「早く堤防をつくれ」と要望を受けて、工期的に短くなったんです。
宮村 国も焦っていたんでしょう。とんでもない変更、追加がありました。
――堤防と道路を一緒につくる難しさは?
宮村 やはりイビツな線形になるので、設計に対するその辺の管理は苦労しました。図面に全て載っているわけではないので、現況に合わせることがありました。その辺は、おもしろかったですけど。
マンションの位置がズレて、2000万円の大損
――土木の仕事の魅力、大変さは?
福井 土木の仕事では、うっかり失敗することがあるわけですが、それを上司に隠す、軽く考えることによって、本来は1万円の手直しで済むものが、100万円もの大きな手直しになってしまった、という経験があります。失敗したときに、「早く上司に相談しておけば良かったなあ」と後悔しました。入社5年目ぐらいの話です。これ以降、「早く芽を摘む」ことの重要さを強く感じるようになりました。
――それは何の現場だったのですか?
福井 排水の構造物の高さを10cmほど間違えていたんです。それが仕上がって、これから舗装をやるとなった段階で、自分で高さが違うことに気づいたのですが、「大丈夫だろう」と思い込んで、上司にも相談しなかったわけです。
その後、「高さが違うやないか」ということになって、最初からやり直しです。舗装屋さんや土工屋さんにも迷惑をかけましたし、手直しのお金も大きくなりました。それからは、手間がかかっても、とにかくダブルチェックをすることにしました。自分のミスは周りに言いにくいんですが、あとで必ずバレますから、「隠蔽は絶対にダメだ」とつくづく思っています。
西田社長 そんなのはカワイイものです(笑)。35年ほど前、尼崎にあるマンションの建物の位置を間違えて、2000万円損したことがあります(笑)。マンションの柱の通り芯のところに、バルコニーの壁の芯を持ってきたために、1.2mほど位置がズレてしまいました。間違えたまま、杭も打って、鉄筋を組んで、型枠を組んで、「さあコンクリートを打つぞ」という段階で、「あれ?道路との間隔がおかしいで?」ということでチェックしたら、建物の位置が間違っていることが判明しました。
ーーワオ!
西田社長 「ワオ!」なんです(笑)。設計者と施主様には「なんとか、そのままいかせて欲しい」とお願いしたのですが、「道路の斜線制限に引っかかるので、設計図通りにやって欲しい」と言われました。仕方ないので、鉄筋をバラして、型枠をバラして、杭を打ち直して、もとの位置にやり直しました。工期的にも1ヶ月以上遅れが出たのですが、それを取り戻すため、突貫工事になりました。
西田工業では、「五つのしない」を標語にしています。それは「黙認しない」「妥協しない」「放置しない」「過信しない」「隠蔽しない」です。これらは、現場だけでなく、会社全体として、あらゆる場面で守るべき標語です。