ケミカル注入後、打設アンカーの定位置をどう確保する?
いつも思うのだが、ケミカルアンカーの削孔はいいとして、特に上向きに打ち込む場合、ケミカル注入後に打設アンカーの定位置確保のために、皆さんはどんな工夫をしてるのだろうか?
少ない数本の打ち込みで、何かを固定するためであれば、それほど苦労はないが、スパイラル筋を絡ませるために、なるべく綺麗に一直線に頭を揃えるために、私はいつも番線を水平に張り、アンカーを縛っている。もっといいアイデアがあれば、ぜひ教えて欲しい。
ブレース本体のスタッドとの間隔もあるので、正確に削孔する事が必須だ。また、ほとんど職人任せになるが、削孔した穴はしっかり掃除する事が重要だ。特に削孔しやすい下向きの位置で注意が必要となる。掃除がしっかり出来てないと、注入した薬液の反応が出来ず、全く定着しない。
私も一度、薬液注入後の次の日に、アンカーの打音検査をしたら、2本明らかに音が違い、触ってみると、手でクルクル廻ってしまったことがあった。所詮人間のやる事なので、そのために別の人間が確認する必要がある。引っ張り試験を行う前に、引っ張り強度の試験値と、試験場所や本数も確認しておくことは言うまでもない。
この現場では全てブレースが垂直に自立する形だったから、それほど苦労しなかったが、 水平に近い斜めに取り付ける場合は、最初のアンカーの位置決めのための墨出しから、ブレース本体の仮置き等、数倍の手間と時間が掛かる。
無収縮モルタル、グラウトの利用が増える改修工事
そして、改修工事の場合は、圧倒的に無収縮モルタル、グラウトの利用が増える。専門の職人がしっかり目張りをするので、どんな位置でも今はほとんど問題ないが、四方が全て見えない場合、あるいは確認できない場合は、漏れがないか細心の注意をしなければならない。私は一度、その確認を他人任せにしたため、裏側からチョロチョロ漏れてるのが分からず、枠を外したら、全く何も充填されていなかったという失敗をしたことがある。
また、グラウト注入場所が仕上げで全て覆われてしまうのであればいいが、仕上げの表面に出て来る可能性がある場合は、その色にも注意する必要がある。一般的にグラウトの色は、一般のコンクリートより、かなり濃く、黒に近い。さらに表面からの浸透率がコンクリートとは違うため、何かを塗って仕上げる場合は、下地にその対策を施す必要がある。
ジャンカの処理にもグラウトが多用されるが、ファイバーセメントも斫った深さに応じて上手く使い分けて欲しい。乾燥するまでの時間が違うので、少しは時間の節約になる。もっとも、その前に、ジャンカなんか造らないぞ!という気構えが大切だ。
良い補修材があるからと言って、コンクリートの打設がおざなりになっているような気がするのは私だけだろうか。全て打ち放しを打設するつもりで打て!とは言わないが、打設前の清掃、散水、型枠の精度とその補強をしっかりやることが結局は、手戻りのない綺麗な仕上がりに不可欠であることをもう一度認識すべきである。これがしっかり出来れば、ジャンカ等の表層の補修も減り、工事のみならず施主や監理者に対しても、徐々に施工者側の発言力が増し、主張しやすくなることに大いに注目すべきだ。