二級建築士は結局、二流なんだよ!
高卒で入社し、実務経験年数をクリアした私は試験を受け、二級建築士の資格を取得した。半年以上勉強し、眠る時間を惜しんで製図の練習をして取得した資格なので、とても誇らしく感じていた。
建築士の資格取得者が増えると会社の評価も上がるので、社内でも褒め称えられ、素直に喜びを感じていた。
が、そこに水を注したのがGさんだった。Gさんは、わざわざ私のもとにやって来た。
G「みんな褒めてるけど、あなた建築士とったの?」
私「はい!おかげさまです」
G「何級?」
私「二級です」
G「な~んだ。知ってる?二級建築士は結局、二流なんだよ!二流建築士がそんなに嬉しいか。そんなんで喜んでんじゃねえよ」
そう言い捨ててGさんはまたドカドカと足音を立てながら去って行った。
私「(クソひねくれオヤジいい、キイイイイイ!!)」
この一件で、私はGのことが更に嫌いになったと同時に、不思議とGに興味がわいてきた。なぜ、こんなにもGはひねくれているのか?と思うようになってきたのだ。
北方謙三の『三国志』を愛読するパワハラ上司
二級建築士の資格を取って、私も少し心に余裕ができたのか、私はGを避けることをやめて、Gに注目してみることにした。
Gが読書をしている姿を見かければ、恐る恐る何を読んでいるか聞いてみた。Gはうざがりながらも教えてくれたのだが、それは北方謙三の『三国志』だった。もう何回も読み返しているそうだ。
Gに仕事のミスを指摘される機会があると、私は直すべき部分を納得が行くまで追い回すようにしてGに確認した。なぜならGの指摘の仕方は「これ、ちげーよ。ふざけんじゃねー!」で、意味がわからないからだ。意味がわからなければ直せないので、執拗に確認するようにすると、うざがりながらも丁寧に教えてくれた。
怖がらずにとにかく聞いてみるようになったのと同時に、一緒に仕事をする機会が増えたこともあって、今までよりも怒られる機会も増えたが、Gさんの心の扉が徐々に開いて行くことを私は感じた。
私が退社する際には、「ほら見ろ、女はすぐ辞める」などと言いながらも、Gさんの知合いの建築家が所属する団体に私を紹介してくれた。「こういう団体に所属してれば、仕事も回ってくるし、食いっぱぐれないだろうからさ。建設業界で仕事を続けたいなら繋がりを大事にしなさいよ」などという言葉を聞いた時には、耳を疑ったが、とても有難かった。
私の自宅が竣工した際には、わざわざ写真家を連れて遊びに来て「撮影料はおごりな」と言って、嬉しそうに見物して帰っていった。別に、Gさんには育ててもらったわけでも特別お世話になったわけでもないが、気難しいGさんと仲良くなれたのは、私の設計士人生において特別な出来事だった。
のちに自己啓発本で知ったことだが、苦手な人と打ち解けたい場合は、その人が読んでいる本について聞くことがとても有効らしい。
建設業界の仕事では、人間関係を大切に日々を過ごさなけれないけない。私はGさんとの出会い以来、気難しい現場人に出会ったら、怖がらずに自分から歩み寄ること、うざがられてもめげないで普通の人よりも丁寧に関わることを心がけている。
粘り勝ちですね
ただふつうはそこまで
できないと思う
私は建築ではなく土木ですが現場代理人の方に、やはり毒舌家がたまにおられます。以前はそう言う方を避けるように、かわしながら仕事をしてましたが年齢を重ねるとその人を知ることが面白く感じるようになりました。建築と土木で業界に違いはありますが同じ女性としてお互い頑張りたいと思います。