構造物ではなく、都市構造全体のシステムに興味を持った
――なぜライフライン地震工学を学ぼうと思った?
鍬田 私が大学4回生になって、研究室を選ぶときに、「生活に密接に関係したものを研究したい」と考えていました。それで、電気、水道、ガスなどのライフラインを対象に地震工学を研究している高田至郎先生の研究室を訪問し、ライフライン地震工学を選んだわけです。
――橋や大きな構造物を作りたいとは考えなかった?
鍬田 大学に入学したときは、私も「大きな構造物を作りたい」という思いはありました。ただ、大学で勉強している間に、単体の構造物ではなく、都市構造全体に関わる広域的なシステムに興味を持つようになりました。
――最初から研究者志望だったのですか?
鍬田 学生の頃は、海外の現場に出てものづくりに関わりたい、と漠然とですが、そのようなことを考えていたと思います。ただ、私の卒業時は就職氷河期で、女性で採用されても現場(とくに海外の現場)に配属されるのは難しい、という卒業生のアドバイスを受けて進路を悩みました。
ただ、研究者であれば、海外に調査にいくこともできるし、海外の共同研究であれば、その国に関わる成果を出すこともできる。アプローチは違えども、やりたいことは達成できると思い、大学院の指導教員の先生にそのまま博士課程を指導してもらいました。
東日本大震災以降、学生の半分がゼネコンに就職
――ライフライン地震工学を学んだ学生の進路は?
鍬田 ここ数年間は、研究室の学生の半分くらいはゼネコンに就職しています。東日本大震災の影響もあると思います。5〜6年前にゼネコンへの就職が内定した学生がいて、それをきっかけに、ゼネコンの仕事や働き方の情報が後輩の学生にも入るようになった感じがあります。ゼネコン以外では、電力やガス、高速道路関係に就職しています。それ以前は、「SEになりたい」という学生が多かったです。
――SE?
鍬田 10年ほど前は、建設業界全体の採用も少なかった時期で、学生の意識も土木から少し離れていました。IT系のシステムエンジニア(SE)とかシンクタンクとか、土木以外の業種に就職する学生が多かったです。東日本大震災をきっかけに、学生の建設業への回帰が増えてきた印象です。
ーー就職指導はしているのですか?
鍬田 学会や研究などで、企業や事業体の方と学生が会う時には、企業の仕事などについて説明したりします。学生の能力や性格などから、このような業種に合っているのではないかというようなことは話しますが、最終的に学生が決めています。最近では、学内推薦を利用しない自由応募する企業が増えてきましたので、知らないうちに複数の企業に応募しています。