トラブルになりやすい「タイルの浮き」
タイル張りの建物を修繕する工事は、塗装のように外への塗料飛散に神経質にならなくていいので、塗装よりもラクな側面もある。本音を言うと、タイル張り物件については「工程作りが面倒だな~」程度の簡単な認識で修繕工事にあたっている。
しかし、そんなタイル張り物件の中でも「当たってしまったか…」と嫌になってしまうタイル張りの建物もある。それは、あきらかにタイルの「浮き」の枚数が多すぎる物件だ。
タイルの張替えは、数量を元に金額が決まるため、もともと足場のないところで試験的に打診してから大体の目安をだして準備しておくのだが、ひどいときには足場を組んで打診をした途端に管理組合の予算をはるかに超える枚数の浮きが発覚することがある。
タイルの打診調査
タイルの打診調査では主に3つの音がある。しっかり躯体に張り付いていると鳴る「カン!」という音、貼り付けモルタルとタイルの間が浮いていると鳴る「キン!」という高い音、躯体からタイルが浮いていると鳴る「ボカッ!」という大きな音。
たとえば、打診棒を転がしたときに、普通の建物の音が「カンカンカンカンカンキンカンカンボコッ」という音だとしたら、トラブルになる建物は「キンキンキンボココココココキンキンカンッ」という絶望的な音がする。この音を聞いたことがない人は、適当な金属の棒で駅なんかの適当なタイルを叩いてみて欲しい、音が違うタイルが必ずあるはずだ。
・・・話は逸れたが、タイルで大きなトラブルとなりやすい理由は、金額が膨らみやすいからである。タイルが足りなくなれば焼きなおす必要があり、その焼き直しに1ヶ月は掛かってしまう。そして、タイルの焼き直しだけでなく、工期の延長にかかる金額やタイル張り替えの金額も大幅に上がる。
塗装の場合は、塗装箇所が増えても人数を増やして、塗料をたくさん頼めば工期も金額も、タイルと比べれば大したことはない。そうはいかないのがタイルがトラブルとなりやすいところだ。
正直、裁判沙汰になろうが和解しようが、修繕工事屋の私たちにとってはどちらでも良いのだが、話し合いの間ずっと工事をストップさせられることもあるので、トラブルなどないに越したことはない。