建設氷河期が再来しても、人材採用は継続すべき
――建設需要が減るのに、人材採用はしたい、というのは矛盾を感じませんか?
都中建 公共工事、民間工事を問わず、建設業界はバブル崩壊後の建設氷河期に、技術者の人材採用を見送りました。高度経済成長のバブル時代には大量採用していたのに、氷河期になると一気にリクルートの窓口を閉ざした点は、今振り返ると建設業界全体が反省すべき大きな失敗でした。それが現在の深刻な人手不足の原因です。渡邊建設にも氷河期世代の技術者は何人かいますが、当時は就職したくてもどこも門前払いで、ツラい経験をしたと聞いています。
——もし、建設氷河期が再来しても、採用は続けますか?
都中建 おそらく、どこの会社も氷河期世代を不採用にした失敗を痛切に反省しているので、景気が悪くても技術者採用は続けるでしょう。将来の担い手確保・育成のために、定期的に技術者の雇用はすべきです。渡邊建設でも10年後に、定年退職を迎える熟年技術者が10人以上はいるので、若い社員たちへの技術継承をしなければと考えています。
――生き残るには、中小建設業者の間での競争にも勝たないとですね?
都中建 はい。いかに差別化を図るかが大切です。これから淘汰される中小建設企業も増えてくるでしょう。私が渡邊建設を継いでから30年以上経ちましたが、ほかの建設企業がやらない仕事をやることで、差別化が可能になってきました。渡邊建設は、大手ゼネコンが「手間が掛かってやれない、やらない」仕事を任せていただいています。
最近では施工図作成を外注する建設企業がほとんどですが、建設のド素人が施工図を作成したり、コスト削減のため中国に発注したりする会社もあります。その図面が正しければ問題ありませんが、それをチェックするのにも手間と労力がかかります。「そんな恐ろしい建設会社に仕事は任せられない。人間はどんどん楽な方向へと選んでいく」という施主様から、渡邊建設をご指名いただくケースもあります。渡邊建設は自社で施工図を描き、ワンストップで工事を進める技術力に自信があります。
いずれにしても、ものづくりに対する情熱と愛情を持っていなければ、建設企業は存続できません。それを支える技術力の確保こそ、建設企業の財産です。そのためにも人材採用がキモになります。渡邊建設も存続のためには、技術力の差別化を図り、椅子取りゲームで座れる椅子を確保しなくてはなりません。