アパレルから建設業界に転職「異常な縦社会だった」
――渡邊社長が、渡邊建設を継いだ経緯は?
都中建 私はもともとアパレル業界の人間で、渡邊建設は兄が継いでいました。ある日、その兄から「人手が不足しているから助けてくれ」と言われて、渡邊建設に入社しました。しかし父は「兄弟で建設企業をやると失敗する」と反対していました。派閥が生まれて、やっかいになると懸念していたのでしょう。しかし、入社5年後、その兄が37歳で急死し、私が跡を継ぎました。
――アパレルから建設業界に入って、違和感はありましたか?
都中建 異常な縦社会でした。当時は談合事件も盛んに報道されていて、「大変なところに来てしまったな」と(笑)。宴会の席でも大手ゼネコンの方々が上席に座り、私は末席。ひどい時は廊下にお膳があって、そこの席に座ったこともありました。こういう経験は、私の世代が最後でしょう。
建設業界は古く独特な社会で、私のような文系出身者が、技術者集団の中で慣れるには10年以上かかりました。やはり超えられない領域もあり、自分が変わることも必要でした。亡くなった兄の長男が今、渡邊建設に入社していますが、彼も文系出身なので難しい業界と思っているでしょう。昔ほどではないですが(笑)。
中小建設企業は「垣根」を越える時代に
――都中建の最近の活動はいかがですか?
都中建 中小建設企業の新入社員は人数が少なく、「同期」を作るのがなかなか難しいので、昨年から会社や業界の枠を超えた新入社員研修を4月に、3日間かけて開催しています。都中建に加えて、型枠団体である東京建設工業協同組合(東建協)、解体団体の東京建物解体協会との共催です。
建設業振興基金の「地域連携コンソーシアム」に関する報告会を聞いた時に、他団体と「一緒に何かできればいいですね」という意見が出たのがはじまりでした。中小建設企業の新入社員に、ビジネスマナーや建設業に関する知識を得るだけでなく、業界内の同期を作ってもらおうという取り組みです。
――個々の企業の取り組みでは限界だと?
都中建 従来はゼネコンとサブコン、元請と下請の関係で、上下に壁がありましたが、これからは建設業という同じフィールドの中で、建設企業が一丸となって人手不足などの問題解決にあたる時代が到来したと思っています。業界内で同期がいれば、たとえ会社を退職しても、せめて建設業に残ってくれるだろうという想いもあります。
この合同新人研修をきっかけに、東京建設工業協同組合と「ビジネスマッチング懇親会」も開催するようになりました。