技術者間でヒドイと有名なゼネコン
すると、所長も何も言い返せない、第1話で前述したあの傲慢なOBが文句を言ってきた。
日本人だけの会議で「仕事が遅い!全く業務が進んでないじゃないか!」と、やるべき業務のリストが手渡された。会議に出席してる人間は、このOBに何一つ言い返せない。私は唖然としたが、とりあえず、そのリストを受け取った。
リストの内容は確かに急を要する業務ばかりで、やらねばならないことは私にも十分理解できるのだが、いかんせん一人では限界がある。OBに対してどう反応しようか、リストを見ながら考えたが、ここで爆発するのは得策ではない。
「やらなきゃいけないのは、私にもよく分かります。ただ一人でやるので優先順位をつけて、一つずつこなしていくしかありません。」
そして、OBの催促は毎朝続いた。
「まだ出来ないのか!」
「まだ出来ません!」
「どうして出来ないんだ?」
「鉄筋の加工図、コンサルへの提出図面、調達の資料造りを優先してやってます。そのあとで各建物の平面詳細図、各部詳細図をコンサルと打ち合わせしながら描いていく予定です。」
「どうしてそんなに時間が掛かるんだ!」
「私の実力では、今の進み具合で精一杯です!」
……こんなやり取りが工事の最後まで続いた。表沙汰にはならないが、このようなパワハラとも言える所業は、海外に限らず、日本の建設現場のあちこちで起きている。
どこのゼネコンも技術者が足りず、派遣社員や契約社員など外部人材に頼っているが、経費節約の意識も強くなり、最低限の人数で半ば使い捨てのような人間の使い方をしてるゼネコンも多い。それが限界まで近づくと、こうなってしまうという見本のような現場だった。
この現場に送り込まれて来た日本人で、「以前もこのゼネコンで働いた経験がある」という派遣技術者は皆無だった。つまり、このゼネコンで継続的に働きたい人はいない、ということなのだろう。私自身、もう二度とこのゼネコンの現場で働きたいとは思わない。そして口コミで、このようなゼネコンは避けられていくようになる。情報を知らない初めての技術者だけが、このゼネコンで痛い目に遭う。
しかし、終らない現場はない。(この現場もすでに完成している。)
すごくおもしろいです。海外に行こうか迷っているので参考にさせて頂きます。アジアの現場も書いて貰えないでしょうか?