駅利用者の安全に配慮した鉄道工事
現在工事中の両駅だが、なんといっても重要なのは鉄道運行と利用者の安全の確保が第一だ。駅構内での工事は夜間がメインだが、昼間工事も行う。仮囲いの隣を利用者が歩いている状況のため、安全性に配慮し、幾度となく施工計画を検討した。
「鉄道運行に支障なく、安全に配慮しながら工事をすすめる工夫も、やりがいとなっています。」(東急電鉄)
具体的な配慮とはどういったものか。
「旗の台駅上家建替え工事は、仮囲いをホーム上に出さなければいけなかったのですが、仮囲いの幅が広いとホーム幅が狭くなり、朝夕のラッシュ時にお客さまの通行に支障をきたすことになります。
そこで駅の営業管理部署と打ち合わせをして、お客さまの通行に配慮し、かつ施工を円滑にすすめていくための仮囲いの位置や幅などを決定しました。池上駅も同様で、お客さまの動線を綿密に検討し工事を進めております。」(東急電鉄)
工事中に駅を通行する際、仮囲いは邪魔になることもある。駅利用者の安全性に配慮した仮囲いの幅については細心の注意が重要だと説く。
鉄道工事には土木・建築施工管理技士の資格だけではなく、東急電鉄の独自資格も必要で、この資格を取得した人でなければ、現場代理人や現場主任技術者として鉄道工事はできない。
「駅という公共施設に携わりたくて、入社した職員が多いように感じます。」(東急電鉄)
工事の最盛期は、旗の台駅改良工事が2018年夏から秋。池上駅開発計画は、2018年は土工事、2019年に鉄骨工事を予定している。
駅舎の古材を活用した「みんなのえきもくプロジェクト」
工事と連動し、さまざまなプロジェクトも平行しているが、その目玉となるのが、「みんなのえきもくプロジェクト」だ。
このプロジェクトは、木造駅舎である池上駅・旗の台駅を次世代につなげていくという想いから、旧駅舎やホーム屋根などで利用されていた木材を沿線の住民に還元し、活用してもらう趣旨だ。
「池上線の木造駅舎やベンチに対して愛着を持たれている方も多いのです。両駅の古材を新たな駅施設へ活用する検討をしております。また、2018年6月には、池上線沿線にお住まいの方を対象にして、駅古材を使用して椅子を作成するワークショップを実施しました。今後も古材活用イベントの開催を検討しており、webで告知する予定です。」(東急電鉄)
両駅の古材発生量は、全体で推定約200㎥、直径30㎝、長さ4mの丸太約555本。
東急電鉄は、「みんなのえきもくプロジェクト」推進にあたり、古材でトップランサーとしての存在感を高めているリビルディングセンタージャパンに協力を仰いだ。古材活用ワークショップの講師のほか、今後も活用方法のコンサルを依頼する。
池上線沿線は今後、どう進化していくのだろうか。
東急電鉄は池上線沿線の魅力をアピールする「池上線 生活名所プロジェクト」で情報発信し、ソフト面からも池上線の魅力をアピールしている。
「新しく大きいモノが必ずしも良いことではありません。駅古材活用のように、池上線の文化を大切にしたまちづくりに携わっていきたい。その魅力をより効果的に発信する手段の1つとして、生活名所プロジェクトに取り組んでいます。」(東急電鉄)
まちの再生にあたり、最近ではリノベーションという手段も選ばれている。
「池上駅や旗の台駅周辺の歴史あるまち並みを生かしつつ、古い家をリノベーションするなど、住むことを選んでいただけるまちづくりをしたいと思っています。」(東急電鉄)
池上線のカルチャーは、人々のつながりやぬくもりを感じる場所であることだ。工事についても鉄道運行と駅利用者の安全性担保を重視し、「みんなのえきもくプロジェクト」や「生活名所プロジェクト」など、沿線のカルチャーをより大切にしたいという東急電鉄の発露とも言えるだろう。
今後の池上線の魅力がどのように高められていくか大いに期待したいところだ。
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