「池上駅開発計画」「旗の台駅上家建替え工事」
池上線沿線が今後、どう変わっていくか。そのヒントになるのが、東急電鉄の中期経営計画のキーワードである「サステナビリティ」にある。
東急電鉄は、個性的で魅力ある拠点が連なる都市構造を目指しており、その1つのエリアとして池上線沿線を重視。「中期経営計画で重点エリアを定めていますが、その1つが池上線エリアになります。」(東急電鉄)
現在、池上線では、「池上駅開発計画」「旗の台駅上家建替え工事」が実施中。これにより池上線沿線はさらに活性化していくが、一方で工事面での苦労もある。
鉄道工事は鉄道運行と利用者の安全を確保することが何よりも重要なのは当然のことだが、今回は、駅古材を再利用するため、解体工事では一苦労もあった。

旗の台駅ホーム屋根リニューアル後のイメージ
では両駅工事の概要を見てみよう。
池上駅は東急建設の施工。築96年の駅舎は5階建ての鉄骨造の駅ビルとして生まれかわり、公共施設、保育園、生活利便施設などの導入を検討している。目に触れるところは温かみのある雰囲気にし、まちと駅の一体感を目指す。
池上駅の外観には740年以上の歴史を持つ池上本門寺を中心とした門前町の歴史性のあるデザインを採用した。「木材を大事にしていく姿勢を池上線沿線にお住まいの方々にお伝えしており、“私も古材が欲しい”という好意的なご意見も多くいただいています。竣工が近づいたら、なんらかのワークショップなども行なっていきたいです。」(東急電鉄)
木造駅舎の場合、一般的には一気に解体して産業廃棄物として処理する。しかし、後述する「みんなのえきもくプロジェクト」の推進のため、丁寧に解体を実施し、駅古材を残したという。
旗の台駅上家建替え工事については、東急電鉄は「木になるリニューアル」と呼んでおり、ホーム屋根の建替え工事を実施中。清水建設が施工を担当している。多摩産材を活用して、築66年の老朽化したホーム屋根・待合室をリニューアルする。
なぜ「木になるリニューアル」という名称なのか。
「一般的に駅施設における改修工事というと、工事の状況で駅施設の利用制限が行われるなど、お客さまからはマイナスのイメージを抱かれることが多いのが現状です。
このリニューアル事業では、完成後のイメージをお客さまと共有することで、そうした印象をプラスに変え、駅をより身近な存在に感じてもらうきっかけにしたいという想いからこの名称を使いました。」(東急電鉄)
旗の台駅のホーム屋根はもともとの木造の良い雰囲気を踏襲し、今回も木造で建替える。木材を使用することによりCO2削減に寄与し、地球環境に配慮した。
また、地元の森林の間伐材を循環利用することで、森林環境の保全にもつなげる。「この事業では多摩産材の木材を利用する予定で、その一部には、『平成29年度東京都森林・林業再生基盤づくり交付金事業』の採択を受けています。」(東急電鉄)