日清戦争を上回る死者数を減らす歩道橋
渋谷駅東口・西口歩道橋が建設されたのは約50年前。1955年以降、日清戦争の戦死者数を上回る勢いで交通事故死者数が増加した(当時、交通戦争と呼ばれた)ことから、全国で歩道橋の建設ラッシュが起きた。渋谷駅の東口・西口歩道橋も同じ趣旨で建設された。
今、渋谷駅前の歩道橋は通勤時間帯になると、歩道橋を渡るために行列ができる。ピーク時には1時間あたり5,000人が歩道橋を利用し、国道246号周辺では1日約7万台の車両が行き交う。1日約10万人(西口・東口合わせて1日約20万人)が利用する歩道橋としては脆弱で渋谷再開発とともに、東口・西口歩道橋を架け替えることになった。まずは、東口歩道橋から先行して着工した。
渋谷駅東口歩道橋架替工事が難工事のワケ
東口歩道橋の架け替え工事(国道246号渋谷駅東口歩道橋架替工事)は難工事と言われている。設計図は1,000枚を越えた。その設計図をもとに、工場で実際の歩道橋の各パーツを延べ2年かけて製作。関連会社の富山工場で製作した総重量約1000トンを超えるパーツは、トレーラー等で渋谷まで運搬し、現場から100メートルほど離れた作業ヤードで事前に組み立てる。
「歩道橋のパーツを小さくすると、架設工事時に交通規制の回数と時間が増えてしまいます。一方、パーツを大きくしすぎると、架設方法や桁のゆがみが生じるという課題も生じます。各パーツの適切な大きさを計画するのに苦労しました。」 (東京国道事務所 計画課事業対策官 田村貴氏)
歩道橋の上空には首都高速道路が走るため、大型クレーンの移動空間が確保できない場合は、多軸式移動台車で下からジャッキアップして、橋桁を設置する。
「渋谷という場所柄、交通量は昼夜問わず多い。この工事が難工事だと言われる理由は、交通量の多い交差点で交通規制を伴う工事であることが一点。二点目は、上空に首都高速道路が走っていて、全工程をクレーンで施工できないなど施工方法に工夫が必要な点です。もう一点は、歩道橋を供用して歩行者動線を確保しながら、架け替え工事を進めなければいけない点です。」(東京国道事務所 工務第一課課長 梶原ちえみ氏)
新しい歩道橋の完成までに、渋谷駅東口交差点では、小規模なものを含めおよそ30回の通行止めを実施する計画だ。
架替工事は、交差点や周辺道路を交通規制し、約5時間で終了させる。そのため道路交通への影響が少ない日曜日に実施する場合が多い。夜間通行止めの際、現場では約150人の作業員が働いている。
また、渋谷駅周辺では輻輳して複数の工事が進行している点も、難工事たるゆえんだ。
「私たちが工事したいと思っても、他の工事も並行して進んでいて、関係機関との調整や協議を踏まえた上で工事を進めなければなりません。その点も、難しい工事と言えます。周辺工事の進捗状況を見ながら、自分の工事を進捗させることが大切です。」(東急建設 小池俊行氏)