幻に終わった冨士工のエム・テック吸収合併
民事再生手続き中のエム・テックについて、新オーナーに冨士工が就き、将来的に吸収合併するのではないかと前回の記事で報じた。確かに吸収合併構想はあったものの、結局エム・テックの具体的な数字を見て断念したというのが内実だった。冨士工関係者は解説する。
「実は、10月4日での債権者説明会では、冨士工の楚山和夫社長も、“今回の説明会ではじめて聞く話もあり、少々怒っている”と発言するなど、この時点ですでにエム・テック支援には後ろ向きでした。その後エム・テックと冨士工の両社が支援の折衝を続けましたが、民事再生は困難であったのが実情だったのです。」
楚山社長は東京商工リサーチの増田氏にこう語ったという。
「冨士工はスポンサーになって最初から支援救済するという考えではなかった。創業者である松野浩史氏からお金を貸して欲しいと言うから貸して、その代わりエム・テック株を担保にしたにすぎない。逆にお金が返ってこないから、こちらは被害者です。」
それでも当初は、100人を超える技術者は魅力的に映り、エム・テックを再生した暁には吸収する構想もあった。断念したのはやはり、放漫経営だったからだろう。
今はエム・テック社員が全員解雇されたため、元エム・テック技術者となるが、その元エム・テック技術者は転職市場ではモテモテだという。
エム・テック破綻と現場監督の転職活動
建設業界紙記者は解説する。
「エム・テックは良くも悪くも建設技術者、施工管理技士を使い倒すイメージです。それに資格所有者も多く、即戦力です。あと、よく働きます。
今、約100人の技術者が野に放たれたのですから、各ゼネコンや転職エージェントも、再就職の誘いをするでしょう。
しかし、問題は総務や管理系です。こちらはゼネコンも余っているのです。なるべくなら、子会社に押し込んで転籍させたいところですが、バブル世代はそろそろ処理したいでしょうね。」
その元エム・テック技術者たちは今何を思うのだろうか。
「全般的に業務量が多い会社だった。マスコミにはいい顔をし、それなりのパンフレットを作成していましたが、施工管理といいつつ内実はなんでも屋。とにかく下請にはカネ払いが悪いので下請に謝ることも仕事だった。
残業も毎月100時間~150時間以上はあったが、残業代の支払いは一切なかったのは腹立たしい。下請は現場監督を責めるが、私たちも辛かった。私も悪いとは思っているが、会社として下請に払わないのだからどうしようもない。再就職の誘い? それはありますよ。」
若手の技術者は割とたくましい。
「入社してすぐ見切りをつけました。ただ、色々と全国に行けるし、資格取得や勉強の場と割り切って仕事をするのであれば悪くなかったです。いくつかのゼネコンの誘いもあります。こういう時のゼネコンの情報網は凄いですね。」
貴社の記事は切り口が鋭く素晴らしい。特に技術系メディアとして独自の立場を築いていると思います。それだけに記事内容が証拠のない口頭取材を取り上げることのないように気をつけて下さい。記事内容に客観性のあるAクラスの建設業界メディアとして益々の発展を期待しています。
マッティ