エム・テック破綻で困惑する被災3県と東京都
エム・テック破綻で頭を抱えているのが地方自治体だ。東北・熊本の復興工事や東京五輪関連の工事を抱えているにもかかわらず、エム・テックはすべての発注者に対して、契約解除通知を出した。
事実上、現時点で工事はほぼストップ。東北被災3県には、各県知事宛に届き、文書には「民事再生による再生を目指しましたが、スポンサー協力が得られず断念しました」と伝えた。
すべての受注残は300億円だが、東北復興等工事は分かっているだけでも契約総額は約185億円。残工事についての扱いで冨士工が引き受けるかについては、「うちは忙しいので難しい」との回答だった。
宮城県は、「エム・テックとの契約解除手続きを進めるとともに違約金などを請求する方針」だが、「今は話せることはほとんどない」という。岩手県は「まず工事がどこまで進んでいるか確認することが先決。いずれ再発注になるだろう」とした。いずれにしても工事未完があり、焦りは否定できない。
そして最も困惑しているのは東京都であろう。東京五輪関連施設工事も中断している。エム・テックは江東区のテニス競技の関連施設「有明テニスの森公園施設改修その他工事」を15億5000万円で受注していた。現場は再生手続き廃止と同時に東京地裁の保全命令の張り紙が掲示され、工事は中断した。しかも、エム・テックは発注者とともに下請にも契約解除通知を発出したため、工事は完全にエム・テックの手を離れた。
東京都は、「再発注を含め、あらゆる方法を検討中」と焦りを隠せない。工期は、2019年7月までだったが、別のゼネコンからは、「検討が長引けば、来年7月まで間に合わないかも知れない」とのコメントがあった。
一方、匿名を条件に埼玉県内の発注者からは、「倒産に至る経緯はどうあれ、長年、埼玉県で頑張ってきた地場のゼネコンが倒産するのは寂しい限り」とのコメントがあった。
エム・テック倒産とワンマン創業者の教訓
建設業界で深刻なのは、「いきなり受注残300億円の工事をやれと言われても、それを引き受けるところがあるのだろうか」という点だ。
「もちろん各社で手分けをする前提」だが、職人や資機材の確保など行うべき業務は多い。しかも受注残の工事は、多忙な首都圏と東北被災地に集中している実情があり、再発注しても簡単に工事を引き受けるゼネコンがあるのか不透明だ。
エム・テックの破産は建設業では今年最大規模となったが、いまだに収束のメドは立っていない。しかし、第2、第3のエム・テックが登場するかという懸念はかなり少ないというのが建設業界の大方の見立てだ。
建設業界からは、創業者の松野浩史氏を責める声が強く、会社を潰したのは、同氏のパーソナリティーに寄るところが大きいとの指摘もある。ワンマン創業者の誤った判断を軌道修正できなかった点がエム・テックの悲劇と言う声もあり、他のゼネコンや建設会社も大きな教訓とすべきだろう。
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マッティ