承認を出さない建設コンサルタント
私が描いて提出した図面も、Iさんから一発でOKが出ることは無かった。
この現場では1枚の図面に掛けられる時間が限られている。そのため、どうしても図面の完成度は、私自身が見ても「もうちょっと情報を書き込むべきだ」と思っていると、案の定「これでは駄目ですね」と突き返される。
私も意地になって「これなら文句無いだろう!」と、通常の密度よりも濃い図面を出すと「最低限これ位は描いて貰わないと、今後もOKできませんね」と言う。
いかにも学校の先生らしく、私が描いた図面を添削してくるのには相当参った。図面の内容だけでなく、線の太さ、図面のレイアウト、縮尺など細々と指示してくるので、久々に学校で教えられているような気分になった。
現場で発生した1つの問題について解決策を話し合う際も、私が何か提案すると3つ4つも疑問や質問が返ってくる。知識が豊富なので1つの問題に、いくつもの回答が浮かぶのだろう。
しかし、Iさんはこの現場にいるゼネコンOBとは違って、意地悪で言っているわけではない。それは良く分かる。要はそんな話をするのが好きなのだ。
だが、こっちが急いでようが焦っていようが、お構いなしに話題がドンドン広がっていく。私も時間があれば、もっと聞きたい内容が多いのだが、1分1秒を争ってる時は、話をどこで切ればいいかと考えながら相槌を打っていた。
毎日その繰り返しで、早く承認が欲しい時は「もういい加減にしてくれ!」としょっちゅう思っていた。
的確な現場対応の建設コンサルタント
大学の先生だから、理屈は知っていても、現場は疎いだろう。
私も最初はそう思っていたが、全くの見当違いだった。
俺も海外で働きたい。
どうやって野口さんは海外で働けるようになったのかを知りたい。