「1日に1回は一緒に現場を回りましょう」と言われ、その時に「Iさんは大学で何を教えてたんですか?」と聞いた。すると「設計、製図、施工、設備、建築史、測量と何でも教えてたよ」と言う。
最初は「本当かな?」と疑ったが、一緒に現場を回りながら受けた指摘は、甘さや妥協のないプロの指示だった。「この人には下手なごまかしは一切通用しない」と実感せざるを得なかった。
Iさんは現場での対応も非常に厳しかった。少しの誤差も認めない。
「このぐらいは誤差の範囲内で勘弁してくれませんか?」と聞くと、「許容誤差が決まってるモノに関しては、その範囲内なら目をつぶるが、それ以外のモノに関しては基本ピッタリやって欲しい」と妥協しなかった。
日本の許容寸法と、海外のブロック
海外で入手できるブロック等は、日本の許容寸法よりさらにズレが大きい。それをそのまま日本の規則で縛ったら動きが取れない。
その話をIさんにすると、「では最初にブロックの受け入れ検査はちゃんとやりましたか?許容誤差の範囲がしっかり定められてますよね?その確認をしましたか?その書類を見せて下さい」と痛いところを突いてくる。
「いや、全部はやってません」と、しどろもどろになり、私は何かを言うたびに、やぶへびになる有様だった。
建設コンサルタントの甘さを基準にしていた反省
だが、これらはIさんが正しかった。責めるべきは私自身だった。
今まで出会ってきた建設コンサルタントの甘さを勝手に基準にして、私自身の考え方も甘くなっていた、という事だ。
Iさんの指摘が繰り返されるたびに、「う~ん、そうだよな」と、初心に帰る事と、基本の大切さを思い知らされた。
長年の経験で得た「ごまかし」が、自然と表に出ていたのだ。杓子定規な考えだけでは現場は進まない。が、やっぱり基本をおろそかにしてはいけない、と言うことなのだろう。
次回は、いよいよこの厳格なコンサルIさんと、工期を早めたいゼネコンOBの間で、バトルが勃発することになる。
(つづく)
俺も海外で働きたい。
どうやって野口さんは海外で働けるようになったのかを知りたい。