「回収水」は、上澄水とスラッジ水に分けられる
ところで、生コンプラントに入ったことがあるだろうか?
プラント塔屋・ベルトコンベヤー・骨材ヤードなどなど、おなじみの地上構造物につい目が向かってしまうが、敷地をよく見ると、あちこちにプール(水溜め)があることに気が付くはずだ。日々、生コンを練っては洗うを繰返す。練れば練るだけ洗浄水も発生するのが、生コンプラントの宿命である。
これらの水を総称して「回収水」という。「回収水」にもいろいろな処理方法があるが、ここでは、再びコンクリートの練り水として活用される水について触れよう。
「回収水」を定義すると、「レディーミクストコンクリート工場の運搬車やミキサなどの洗い排水から、骨材を除いた水のこと」をいい、以下の2つに分けられる。
- 「上澄水」・・・セメントから溶出する水酸化カルシウム等を含むアルカリ性の高い水
- 「スラッジ水」・・・スラッジ固形分(水和生成物・骨材微粒子)を含む水
さて、「上水道水以外の水」と同様、「回収水」にも品質規定がある。以下3項目であるが、先ほどの数値と変わらないので、一緒に覚えてしまおう。
- 塩化物イオン(Cl-)量 200ppm以下
- セメント凝結時間の差 始発は30分以内、終結は60分以内
- モルタル圧縮強さの比 材齢7日および材齢28日で90%以上
品質試験は12か月に1回以上行わなければならない。検査の試料作製に際して、「スラッジ水の濃度を5.9%に調整したものを使用する」ことまで覚えていれば完璧だ。
スラッジ水を使用するとどうなる?
「回収水」の中でも「上澄水」に関しては、練り混ぜ水として上水と同様に使用してよい、と言われている。ただしここで注意することがひとつある。
回収水全般に関してだが、構造物の計画共用期間が「長期」「超長期」および「高強度コンクリート」には使用してはならない。
それは何故か?
「回収水」には、セメントや骨材の残りカス(スラッジ固形分)が含まれていて、その成分が、新しく練り混ぜるコンクリートに対して少なからず影響を及ぼすからだ。
実は、スラッジ水を使用する場合、「スラッジ固形分率は3%を超えてはならない」と上限が規定されている。この3%が何に対しての割合かをしっかりと覚えてほしい。
生コン「1m3当りに対しての3%」ではなく、その配合の「単位セメント量に対しての3%」である。逆にスラッジ固形分率が1%未満ならば、上澄水と同様にそのまま使って構わない。
では最後に、スラッジ水を使用して練ったコンクリートには、どのような注意点が必要になるかを見ていこう。いつも通り、すべてが連関していることに注目してほしい。
スラッジ固形分とは、いわば微粒分である。微粒分が増えると単位水量が増える。単位水量が増えると、単位セメント量も増える。微粒分が増えると、吸着されて空気量も減少しやすい。微粒分が増える分、細骨材量を減らして帳尻を合わせる。
具体的な数値でいうと、
- スラッジ固形分率1%につき、単位水量・単位セメント量をそれぞれ1~1.5%増す。
- 細骨材率は、スラッジ固形分1%につき、約0.5%減らす。
- 空気量が減少する傾向にあるので、AE剤などの量を調整する。