模範的なコンクリート構造物のデータベース
二宮は、コンクリート施工記録データベースの信頼性を確保することが、山口システムの心臓部と位置付ける。
そのために考え出したのは、システムが健全に継続するための仕組み。PDCAサイクルにより品質確保された構造物を「会いに行ける模範的構造物」に選定し、研修題材とした。
そして、「会いに行ける模範的構造物」の研修会・見学会を通して、山口システムを波及させると同時に、ネット上でオープンにしているコンクリート施工記録データベースの活用を促した。
それによって、山口システムの理解が深まるとともに、データベースの利用が活発化。利用時にデータのミスを発見してもらい、修正情報につなげるなどの相乗効果も生まれた。
「“会いに行ける模範的構造物”の代表的な事例として、2014年度に施工したボックスカルバートが挙げられます。
この構造物は、施工者が遵守すべきコンクリート構造物の施工の基本事項を整理した『施工状況把握チェックシート』(後出)の各項目を満足するように様々な工夫を行い、積極的な品質管理を行った結果、ひび割れの発生がなく、その他の不具合も生じていない優れた施工となっています。
2015年には、山口県が毎年開催している技術講習会(第9回)において、施工者が工事報告を行っています。」(二宮)
「会いに行ける模範的構造物」は、長期にわたり耐久性の変化を高い精度で調査できることから、有用な研究材料になっている。土木学会でも議論の対象になっているところだ。
高品質コンクリートを構築する「施工状況把握チェックシート」
山口県では、2006年から産官一体となって、ほぼ年1回のペースで開催している技術講習会がある。産は建設業協会、土木施工管理技士会、生コンクリート工業組合、測量設計業協会が、官は県と県建設技術センターが参画している。技術講習会には、山口県内の建設技術者が400~600人参加する。
そこは施工者、発注者、生コン生産者が集う情報交換の場所だ。基調講演はコンクリート研究者に依頼し、その他の演題は参加団体の技術者が発表する。いわば技術力の底上げを図るという側面も持っている。
「今年で12回目を開催することが出来ました。講習会で配布した資料は山口県のHPでダウンロードできます。
山口システムのキーワードは、あくまでも”コンクリート構造物が主役”ということです。協働で各自が役割を果たすために、情報を公開・共有します。
そうすることでコンクリートのパフォーマンスをしっかりと引き出し、素材を生かした構造物を造ることができるのではないでしょうか。
山口県のデータベースを使ってください。結果的にコスト縮減にもつながるでしょう。」(二宮)
山口システムのPDCAサイクルは、全国各地へその姿を変えながら取り入れられている。
その中でも、『施工状況把握チェックシート』の活用は、直ぐにでも取り入れることができる手法だ。これを監督職員や現場作業員に浸透させることが、高品質で耐久性のあるコンクリート構造物を構築できる近道かもしれない。
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