土木施工管理技士のCPDとCPDSの違い
――通常、継続学習制度はCPDと称していますが、連合会ではCPDSとしています。CPDとCPDSの違いは何ですか?
連合会 「CPDとCPDSはどこが違うのか」という質問は大変多く寄せられます。全国土木施工管理技士会連合会は2000年に、他の建設系学会・協会に先駆けて、いち早くCPD(継続学習制度)を導入しました。CPDを一般名詞だとすれば、CPDSはCPDにSystemのSを付けた全国土木施工管理技士会連合会独自の固有名詞です。商標登録もしています。その違いです。
CPDSは土木施工管理技士などの加入者が講習会などで技術力向上に資する学習をした場合、その学習の記録を登録し、必要な時に学習履歴証明書を発行するシステムです。国土交通省や地方自治体をはじめとする発注者は、技術力を適切に評価する指標としても、CPDSを有効であると考えており、総合評価方式での技術者評価項目で加点しています。
全国土木施工管理技士会連合会の会員とは別に、CPDS会員もおりますが、それは技士会に加盟しなくても入会できます。CPDS会員数はおよそ16万人です。うち6割が技士会会員、4割がそれ以外の会員です。
ちなみに、技士会以外の他団体が行う講習会でも連合会がCPDSを認定・登録することも実施しています。
CPDS認定講習会の内容の線引き
――地方の技士会と全国連合会の役割の違いは?
連合会 技士会が行う講習会では地方技士会が設営・受付などの実務を担当し、連合会は講師の選定・派遣業務を行っています。講習の内容も限られていますが、なるべく地方技士会の自主性に任せています。また、技士会以外の団体が連合会にCPDS認定の事前申請をすれば、連合会が認定・登録し、記録・証明を行っています。
――継続学習制度でこれは認めるが、これは認めないという、講習内容の線引きはありますか?
連合会 施工管理において役に立つかどうかが大きなポイントです。過去にさまざまな経緯があったのですが、CPDSとして認定するのは、土木施工管理技士にとって現場で必要な技術に特化することに決めました。ほかの団体は幅広く認定し、推奨単位も50ユニットのところが多いのに対し、連合会は認定範囲が限られていることから推奨単位を20ユニットとしています。
たとえば、計画論に関する講習会は長年、施工管理と関係ないということでCPDS講習会として認めていませんでした。これに対して「なぜ認めないのか」という反発もありましたので、技術委員会の審議でCPDS講習会として認めることになりました。
土木施工管理技士の資質向上も連合会にとってのテーマですから、その観点から方向転換したということです。その代わり、施工管理と直接関係ない講習は取得上限ユニット数を設けることとし、年間6ユニットまでとしています。来年度から計画論に関する講習会など幅広い知識もユニットは限定されますが、CPDS認定講習会として認められます。
このほか暴力団対策関係講習など幅広い継続学習も認定することになります。世の中の流れとして現場管理技術者も技術力が優れていれば、それで問題がないと言う時代ではなく、地域住民に対する説明力やコミュニケーションも求められます。ですから、来年度のCPDSは大きく変容します。今、システムの変更などの業務を行っているところです。
CPDSと工事成績評点のジレンマ
――これだけCPDSのユニットに人気が集まっている理由は、総合評価における技術者評価で加点される点ですね。会社からもユニットを稼げと言われている土木技術者は多いです。
連合会 その通りです。2006年あたりからCPDS会員が伸びてきておりますが、これは総合評価方式での技術者評価項目に採用するところが増えたからです。国土交通省各地方整備局をはじめ、各都道府県、各市での採用も伸びてきています。しかし、まだすべての公共事業で採用していませんので、各都道府県の技士会が各発注機関に採用を求めています。
ただ、CPDSは土木施工管理技士が自己研鑽するための継続学習制度で、職場以外でも勉強するというのが本来の趣旨です。入札で評価されるからユニット数を稼ごうという動きは、本末転倒で偏った思考です。
そのため、CPDSのあり方も変化が求められるべきです。たとえば、今後、学科合格した後の1級土木施工管理技術検定の実地試験についても、CPDSなどの自己研鑽をしている技術者であれば、現行では2回受験可能であるところの回数を、より多く受験できるなどのメニューもあっていいと思います。
さらに、今はインフラのストック時代と言われていますので、土木技術者も「維持管理」の知識について研鑽を積むことが大事です。維持管理の講習受講をが義務化されるようなことがあれば、それを記録し証明するなど、CPDS制度を進化させていくことも考えられます。大事なことは土木技術者自身が積極的に自己研鑽した知識を現場で活用することです。
発注者側の継続学習もやった方が良い。