毎朝6時にオープン、取扱商品は1万点以上
――児玉センイ 矢賀店で取り扱っている品数はどれくらい?
児玉武正 小さな工具類まで入れると、扱う商品の点数は1万点以上です。
私たちのような店舗は、地域色を反映した品揃えが基本です。例えば、海が近い地域なら漁業関係、山が近い地域なら林業関係の作業現場で働くお客さんが多くなりますが、お求めになられる商品はそれぞれ違います。
当店は高速道路のインターチェンジに近い立地なので、広島市内の工事現場だけでなく、郊外や県外の現場に行かれるお客さんも来店されます。
そのため、出張用の下着や靴下、バッグ類なども取り揃えているので、品数も多くなります。
――どういった経緯でNHKの人気番組に取材された?
児玉 NHKから話を持ち込まれた取引先のメーカーが「広島に面白い店がある」と伝えてくれて、思いがけず取材していただくことになりました。
取材していただいた「ドキュメント72時間」という番組は、ひとつの場所で72時間(3日間)にわたって取材を行い、そこで見られる様々な人間模様を定点観測するという番組でした。
毎日早朝から夜遅く(朝6時~夜8時30分)まで営業している作業服店は、番組の趣旨にぴったりだったようです。
――反響は大きかった?
児玉 昨年末に番組が放送されてから、わざわざ県外から買い物に来られるお客さんがいたり、いまだに「テレビを見たよ」とよく言われます。
そのおかげで売り上げが急激に伸びたということは全くありませんが(笑)。
ただ、創業者である父が1975年に進物屋として開業して、この地で40年くらい営業してきた店を一般の方にも広く知っていただける良い機会になったと思います。
ほとんど売れなくなったガテン系の作業服
――店内は、作業服とは思えないおしゃれな衣料が多いですね。
児玉 ええ。作業服はここ数年でカジュアルウェア化が進んでいるんです。
最近は、建設業をはじめ、現場作業の職業は「きつい」「危険」「汚い」「給料が安い」といった、いわゆる3K、4K業種のイメージが定着して、なかなか若い人が集まりません。
そこで、作業服メーカーは「まずは見た目からカッコよくしよう」というコンセプトを打ち出しました。
全国で830店以上を展開する作業服・関連用品専門店の国内最大手「ワークマン」さん然り、今では若い人の興味を引くスタイリッシュな作業服が主流になっています。
――確かに、最近はニッカポッカ姿の職人さんをあまり見かけません。
児玉 かつてのいかついガテン系スタイルは、関東ではまだ需要があるようですが、広島や中国地方ではほとんど売れなくなりましたね。
私は大学卒業後、家業に入る前に、岡山県の大手作業服メーカー「寅壱」で4年ほど修業していました。
当時は鳶職などのニッカポッカに代表されるような、いかついスタイルが全盛でした。寅壱の代名詞だった鳶装束は”作業服のアルマーニ”と呼ばれていたくらいです。
その後も、数年前まではいかつい路線が作業服業界の定番でした。
ですが、最近は建設業界もコンプライアンスが問われる時代になりました。いかにもそれっぽい人がそれっぽい格好をして現場に出入りすると、近隣に威圧感や怖いイメージを与えかねません。
ゼネコンでは、いかつい風体を嫌って、ニッカポッカを着用禁止にするケースが増えてきたみたいです。
その代わりに台頭してきたのが、現在のカジュアル系スタイルの作業服なんです。
確かに知り合いのとびをやってる人もゴルフに行くような長袖にポロシャツを重ねたりしています。
時代は変わりましたね。
この夏は暑さよりゲリラ豪雨に注意と言われていますし、またどこで昨年の夏のような災害にみまわれるかわかりません。工事現場の人が着るウェアというより、より幅広い人が求めている。まさに時代にマッチした展開だと思います。
短パンは大手ゼネコンで認められるかだよな
建設業界の者ではないですが、面白かったです。ニッカボッカを見なくなった理由があるのですね。あれはあれでカッコイイので残念です。