ICT活用工事とコスト議論、外注の危険性
たしかに、土木の現場に「ICT活用工事の流れ」を定着させることは優先事項である。コストをめぐる議論は、その定着の流れを阻害しかねないため、ICT活用工事の流れが定着してから展開すべきであると私自身も重々承知している。
しかし、すでにICT活用工事を自分の武器として実施している人たちから見たら、この「ICT土工における削減効果」の数値はどのように映っているのだろうか?
もし周囲にICT活用工事に本気で取り組んでいる人がいたら、ぜひ聞いてみてほしい。
多分こう言うであろう、「時間の短縮もできるがコストも削減できる」と。私も「できる」と自信をもって言おう。
ただし条件がある。外注に頼るような「流れ」を作り上げている企業はおそらく無理である。
外注に頼る流れを作ってしまうと、例えば、測量データから現状を理解し、そのデータを使って設計データの細部を修正し、ICT建機にデータを渡すなどの「データの連続性」が途切れてしまう。外注によってそのタイミングで余計なコストがかかってしまうのである。
ICT施工における一連の流れをすべて外注で請け負う会社があるのも理解しているが、そうした会社を使う場合、実際の課題やその課題への解決策がわからないまま、ICT施工が行われる。そのため、本当のコストに関する議論は誰もできなくなってしまう。
真剣にコストに関する議論を戦わせられる方が、日本国内にどのくらいいるのか?
いま一度、関係者全員でコストと向き合ったほうが良い時期になったのではないかと思っている。
受注者のみならず、発注者もしかりである。
コストの議論は昨今の「ICT定着の機運」に刃を向ける可能性もあり、劇薬であることは理解している。
しかし、i-Constructionを一過性のお祭りで終わらせないためには、コスト議論は避けられない。
ICT積算基準(国土交通省)と、有名な積算ソフトの比較
ちなみに、積算上の公表されている資料や、とある有名な積算ソフトが出しているコストと、実際のコストを比較したことがある人はいるだろうか?
施工会社はこれらの情報を逐次理解し、「実際の費用との差をどうやったら解消できるのか」を常に考え、試行錯誤すべきである。
いま試行錯誤しなければ、いつやるのか?
ICT活用工事を拡大するこの時期を逃すと、本当の戦いには今後勝てなくなるはずだ。
ICT活用工事を生かすも殺すも、今の「あなた」であることを再度確認してほしい。