キャッシュフローを改善する「施工履歴データによる土工の出来高算出要領 (案)」
さて、コスト議論もさることながら、ICT活用工事のメリットは、検査監督業務にもこのデータを活用できることが重要である。
皆さんは「施工履歴データによる 土工の出来高算出要領 (案)」が、2019年3月1日に改定されていることをご存知だろうか?
前回の資料がもし手元にあれば、どこが変わったのかを確認してほしい。多くの改定がなされていることを理解できるだろう。
この基準は本来、われわれ施工会社がICT活用工事を行うことで、一番メリットを享受できる部分である。
が、誰もこの基準を使って自社のメリットを出している人はいない。私の知る限り、ほとんどいない。
実は、この基準は施工会社のキャッシュフローを大幅に改善するために、発注者が肝入りで作ってくれている基準である。
しかし、前回の基準で実施しようとすると、「どのような情報でその出来形を確認するのか?」「確認するためにどんな情報が最低限必要になるのか?」などが基準にあまり書かれていないため、日本人特有の「書かれていないとできない」状況に陥り、ほとんど利用されていなかった。
そこで、何が問題でどうすればその問題を解決できて利用できるようになるのかを、ある実際の案件で実施してみたところ、多くの課題と改善点を見つけることができた。
一番簡単だったのが帳票である。どんな帳票がないと確認できないのかを考え、発注者と意見交換しながら「このような帳票ではどうか」というやり取りを数回すれば、だれでも作成できる内容である。
このような単純なところから始めて、出来高数量として帳票で認めてもらい、実際の出来高の9割を毎月支払い処理してもらうことも可能である、というのがこの基準である。
「施工履歴データによる土工の出来高算出要領 (案)」を活用しよう
出来高帳票を作成し、発注者と協議をして出来高数量を認めてもらい支払い対応を進めるということを従来の方法で毎月処理するのは手間がかかりすぎて、至難の業だ。
出来高数量確定のためにかかる時間とコストを考えると、毎月するほうが時間もコストもかかるという流れであったが、それがゆえに現場運営のために必要なキャッシュフローが厳しくなることも多かった。
ICT活用工事はコストがかかるということを盛んに言われる方も多いが、逆にICT活用工事だからこそ、現場のキャッシュフローが改善され、本当の意味で生産性が向上する問う流れを作り出すことが重要である。
読者の方々、この「施工履歴データによる 土工の出来高算出要領 (案)」に着目し、どんどん活用してみようではないか。必ずメリットはある。
もし、「施工履歴データによる 土工の出来高算出要領 (案)」での運用にまだ難しい点や課題があるのであれば、それを解決するために「どうするか」を考えるのである。考えなければ、その先はない。
・・・次回は「i-Constructionの本音 向かう先はどこへ」という内容を記述する。
どこに行くのか、向かうのか、あるいは行きたいのか。ICT活用と工事契約に関してもまとめてみたい。
(つづく)