8つの工業高校を年6回あいさつ回り
橋口組が人材確保のために取り組んでいるのは、▽HPの開設▽パンフレット制作・配布▽インターンシップ▽学校へのあいさつ回り▽企業説明会への出展▽SNSの活用―など、一般的なものがほとんど。もちろんハローワークやポリテクセンターなどの行政サービスも活用しているほか、保護者説明会や現場見学会などの建設業協会の活動にも積極的に参加している。
この中で髙山が特に重視しているのが、学校へのあいさつ回りだ。髙山は、土木系のある熊本県内の工業高校8校を対象に、年度当初をはじめ年末年始、採用の前後など年6回のあいさつ回りを欠かさない。
なぜそこまであいさつ回りに拘るのか。髙山はそのわけをこう話す。
「対象となる土木系の高校生は県内で300人ほど。このうち毎年、県内の土木建設企業に採用されるのは約30人しかいません。あとは公務員や県外に流出するか、他産業に就いているのでしょう。それほどしか県内建設企業が認知されていない証です。
だからこそ、進路指導の先生、土木科担当の先生それぞれにあいさつし、名刺を渡します。なかには一日かけて名刺だけ置いていくこともありますが、そうしないと各学校に2,000社ほどの求人がある中、選考のテーブルにも上りません。こうした努力を惜しまないことが大切なんです」
新卒採用に成功しているのは30社に1社
現在、熊本県建設業協会には約700社が加盟しているが、髙山は自身の経験からほとんどの企業が人材確保対策に悩んでいるとみている。
「方向性が見いだせているのは3割ほどですか。このうち実際に採用出来ているのは20数社でしょう。実際問題、『どうしていいのかわからない』というのが実情なのかもしれません。
各高校を訪問すると、『このままだと人材流出が加速化する』など、先生の悩みの声を聞くことができます。だからこそ学校へのあいさつ回りを多くの企業で実践し、学校と接点を持ってほしいですね」
ただ、闇雲に人材確保を推し進めることには警鐘を鳴らす。求める人材はどういう人なのか、経営計画に何人の新規採用を入れ込んでいるのかを明確化しないと企業自体が成り立たないとみるからだ。
「うちの会社で言えば、欲しい人材は”情熱”を持って”挑戦”し続ける人。技術の継承として10年、20年先を見据え、離職者のことも想定して、最低でも年間2人の採用を考えています。
これから、ますます公共工事の予算が厳しくなる中、受注計画をしっかり立てながら人材を確保していくことは経営戦略としても必要不可欠になります」と強調する。