土木は住民にちゃんと伝えてこなかった
——ツタワルドボク(以下、ツタドボ)とは何ですか?
片山 産学官の枠を超えて、土木の魅力、意義を伝える土木技術者の集団です。われわれ自身が活動することもありますが、同じ思いを持った同志を増やしていく活動にも力を入れています。
——設立当初から関わってきたと?
片山 「一般社団法人九州橋梁・構造工学研究会(KABSE、カブセ)」(以下、KABSE)という組織があるのですが、ツタドボのスタートは、このKABSEの中の維持管理に関するマジメな研究分科会だったんです。九州の橋梁のメンテナンスをちゃんと実現していくためには、どういう技術が必要かについて、議論をする分科会でした。
この分科会の議論の中で、仕組み自体をちゃんと考えなければならないという話になり、「住民、世の中の理解が必要だ」という論点が出てきました。私は、この論点に関するワーキンググループのとりまとめを行なっていました。
——広報に関する議論ですか?
片山 広報だけではなく、住民説明なども含むもっと広い領域について、議論していましたね。私は当時、2011年ごろですが、福岡北九州高速道路公社(以下、福北公社)という福岡県内の都市高速を管理運営する地方道路公社に勤めていました。
福北公社では、都市高速のメンテナンスのため、「未来への投資」として20年間で630億円投じるプロジェクトを担当していました。当時、このプロジェクトは「無料化先送りだ」と言われ、地元メディアなどから叩かれたんです。われわれとしては、意義を感じており十分準備して記者発表したつもりだったのですが、理解してもらえなかったわけです。
——「無料化」に対する期待があったわけですね。
片山 借金をして都市高速を作って、メンテナンスなどを行いながら借金を返していって、借金がなくなったら、最終的に無料にするというスキームなんですよ。メンテナンスにお金をかけるということは、料金を上げない限り返済期間を延長する、その分無料化が遅れることになります。
未来への投資のために、料金を上げず、無料化を遅らせる判断をしたわけですが、それを「無料化先送り」と批判されたんです。周りの理解が全くない状態のままでは、メンテナンス工事はできないということで、われわれは非常に困りました。
この時、「住民やメディアなどに対する広報、説明って、すごく大事だな」と痛感しました。われわれとしては、もちろん「しっかり説明した」と考えていたわけですが、身勝手に「良いことをした」と思い込んでいただけだったんです。住民からは「メンテナンスのためにそんなにお金が必要なのか。何でだ」という反応でしたから。「ちゃんと伝えていない」から、こういう結果になったわけです。
そんなことがあって、KABSEの中に「ツタエルドボク」という研究分科会を立ち上げたんです。これがツタワルドボクの最初です。この活動を2年やったのち、ツタワルドボクに名称を変更し、さらに2年間活動しました。この4年間の活動を通じて、仲間もだいぶ増えました。
ただ、KABSEはとしての活動は完全に手弁当なので、「志だけではどうにもならない」「疲弊していくだけだと」考えるようになりました。中心メンバーの仲間たちと相談し、「一般社団法人化しよう」という話になり、5年目の2017年に一般社団法人化しました。
——全国組織として立ち上げたわけですね。
片山 そうですね。実際には九州での活動が多いですが。
志は素晴らしいけど、まだ全然伝わってないですよ。
周りで知ってる人、会ったことないです。
聞いたことないwww
まさに、井の中の蛙。