コンクリートは優しく、丁寧に扱って
コンクリート構造物の品質確保に関して、効果的な手立てはあるのか。近田は「一般的なことかもしれませんが、技術者の経験知は大きなウエイトを占めるでしょう。これを積み上げていくしかないような気がします」と語る。
その上で「事後評価することは有効な手段だと思います。山口県からはじまって熊本県へと受け継がれているQC活動は、技術者に幅広い知見を促す観点から非常に成果を上げているのではないでしょうか。
長野県や群馬県でも竣工時にチェックする取り組みが広がっています。特に発注者、施工者、生コン製造業者が相互に生コンクリートを理解する統一した組織があることは素晴らしいことです」と、全国的に広がっているコンクリート構造物の品質確保に対する取り組みを高く評価する。
最後に、近田は良質なコンクリート構造物を造るヒントを明かす。
「コンクリートは建設材料としてコストも低く良質なものです。セメントを除く骨材などは地産地消で、それをうまく使い練り混ぜたものですから、何度も言いますが固まるまでに分離しやすい性質を有しています。
そのことを理解して、コンクリートは優しく、丁寧に取り扱ってほしいです」
近田孝夫・プロフィール

1977年九州大学大学院修士課程修了後、新日鉄化学(株)入社。在籍中は耶馬渓ダム、明石海峡大橋、多々羅大橋、東京横断道路海底トンネルなどの大型構造物のコンクリート配合試験・試験施工などに従事。新日鉄高炉セメント(株)・技術部門管掌取締役を経て、現在、(株)麻生/建設コンサルティング事業部でシニアアドバイザーとして後進の指導にあたる。この間、九州大学大学院博士課程修了後は、九州大学大学院、宮崎大学、福岡建設専門学校で教鞭を執るなど、学識者として活躍。さらに国土交通省のコンクリート構造物品質評価委員、経済産業省地球温暖化ガス抑制対策調査研修委員を歴任し、産・官・学に精通するコンクリートの第一人者。2016年から日本コンクリート工学会九州支部検査役。
コンクリートの質の良さって、何十年も経って出てくる不具合でわかるんだよね。
だから、技術も大事だと思うけど、根っこに技術者としての矜持も大事なんじゃないかと思ってる。
それが無かったら、この程度でいっか、ってなるしね。
こだわろうと思えばどこまででもこだわれるけど、その結果が分かるのがずっと先というジレンマ