3Dレーザースキャナー搭載のMMSとGISをリンク
首都高グループはなぜ、InfraDoctorなるシステムを開発したのか。その背景には「首都高インフラの高齢化(老朽化)」と「生産年齢人口の減少」という2つの要因があった。
既存のインフラがどんどん古くなる一方、働く人が少なくなれば、膨大なストックのメンテナンスは立ち行かなくなる。それを防ぐには、より効率的なメンテンナンス技術をつくり上げるしかない。そういう問題意識から2014年、InfraDoctorの開発がスタートした。
InfraDoctor 開発に際し、目をつけたのが3次元点群データ(3次元レーザースキャナー)技術だ。この技術は、当時すでに工場の配管のチェックなどに使用されていたが、これを首都高の構造物チェックに転用するアイデアが浮上した。
ただ、工場で使用されるレーザースキャナーは固定式。全延長320kmに及ぶ首都高のすべての点群データをとるのに、いちいちスキャナーを設置するのはあまりに非効率的だ。そこで、走行しながら連続的にデータを収集できるスキャナー搭載の技術を開発することになった。これらの点群データに関する技術を有していたエリジオンと一緒に開発を始めた。
また、MMS開発は、GIS(地理情報システム)を用いた空間情報処理に関するノウハウを持つ朝日航洋が担当した。点群データをGISとリンクさせることで、いつどこのデータなのかすべて紐付けすることが可能になる。のちに触れるが、GISとのリンクは、点群データの様々な拡張活用に大きな威力を発揮する。
開発は、実際の首都高をフィールドに進められた。InfraDoctorの開発を担当した永田佳文・首都高技術株式会社インフラドクター部長は「首都高という現場を持っているのは、大きな強みだった」と振り返る。
首都高のメンテナンスを行う首都高グループの社員に対し、どういうふうに使いたいか、どういう操作にすればラクかなどについて、ヒアリングを行いながら、実地で開発を進めることができたからだ。すでにできあがった技術をよそからポンと持ってくるより、試行錯誤しながら自らつくり上げた技術の方がデキが良いのは当然のことだ。
「自分たちでシーズとニーズをマッチングさせながら開発をしていったので、それほど手戻りもなく、スムーズに開発が進んだ」と話す。