点群データで、補修計画も自動作成
この表は、InfraDoctorの活用用途の一覧だ。その用途はざっと16項目に上る。「点群データを1回とっておけば、その後なんにでも使える。コストパフォーマンスもかなり高い」(同)と言う。
InfraDoctorを使えば、路面性状調査も飛躍的に効率化される。路面のヒビ割れ検知には、3次元スキャナーではなく、ラインセンサカメラを用いる。スキャナーだと、微細なヒビ割れを検知しないリスクがあるからだ。
ラインセンサカメラの効果は絶大で、人間の目で見落としがちな微細な変状も捉える。その画像からAIが異常を自動検知する。調査範囲は線ではなく面なので、MCI(舗装の維持管理指数)やIRI(国際ラフネス指数)を面的に自動算出できる。
画像を「準リアルタイム」で解析するプログラムの開発は、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻の石田哲也教授と東京大学生産技術研究所の水谷司准教授と共同で開発した。このプログラムを使うと、100kmの点群データ解析が30分ほどで終わる。
従来の解析プログラムだと、点群データなどの解析に数ヶ月の時間を要していた。解析に時間がかかると、異常箇所の補修までのリードタイムもその分長くなる。データ解析が早く終わることは、補修も早くできることを意味する。首都高サイドが「準リアルタイム」にこだわった理由はここだった。「とにかくすごいプログラム」(同)と絶賛する。
InfraDoctorには、補修に必要な費用を算出する機能もある。あるエリアを選択すると、エリア内の補修が必要な箇所を自動で選定し、費用を算出する。予算に応じて、補修箇所を選定し、補修計画も自動でつくることができる。「舗装を面的に調査し、補修箇所の選定、補修計画まで自動でできるシステムは、世界を見てもInfraDoctorが初めてではないか」(同)と指摘する。
パソコンで測量ができる効果は絶大だ。首都高と鉄道の間に作業足場を組む場合、従来のやり方だと、測量協議などを含め、40日ほど要していた。InfraDoctorを使えば2日で終わる。「生産性は実に20倍以上。InfraDoctor導入によって、一番効果があった部分だ」(同)と目を細める。
まだある。点群データから自動運転用のマップを作成も可能である。自動運転が解禁されたあかつきには、首都高上を隊列走行するトラックが日常の風景になるわけだ。点群データの活用範囲の広さには、眼を見張るものがある。
InfraDoctorに課題があるとすれば、点検走行中、1台でも通行車両があると、その部分のデータがとれない点だ。
永田部長はこれを「ノイズ」と称する。ノイズを消すためには、もう1度点検車両を走らせる必要がある。全長数百kmの区間のすべての点群データをとるためには、複数回の走行が必要となる。その分費用もかさむというわけだ。