大学生が下水道を「再解釈」し、「表現」する
初年度のプロジェクトとして、小冊子「ZINE(ジン)」の制作を行うことになった。制作するのは、東京都下水道局ではなく、若者自身。若者自身に下水道を「再解釈」してもらい、「表現」してもらうことを通じて、下水道の新しいイメージを創出してもらうというねらいがあった。都内の美術大学をはじめとする大学生32名を公募。4名ごとに8つの企画・制作チームを編成した。
同年11月、小冊子編集のノウハウを学ぶワークショップを開催。講師には、雑誌「ケトル」の嶋浩一郎編集長が立ち、編集スキルなどについて学んだ。翌12月には、下水道関連のインフラ、自然などに触れるため、南多摩水再生センターやその処理水を放流する多摩川でフィールドワークも行った。プロ・ナチュラリストの佐々木洋氏の協力を得て、川辺の生物などについても学んだ。
ワークショップ、フィールドワークの後、8チームは、それぞれ独自の切り口でコンテンツの制作に入った。3ヶ月後の2019年2月、成果報告会、審査を行った。
当初は、最も優れた作品のみを東京都下水道局の広報ツールとして活用する予定だったが、どの作品も創意工夫され、優れたものばかりであったので、すべての作品を広報ツールとして採用。局の広報施設などで配布することにした(東京都下水道局HP 全8種類のZINE紹介ページ)。
「都職員ではなかなか思いつかないようなアイデアがあった。非常に完成度の高い制作物ができた」(同)と手応えを感じた。
地下ラボの動向は、随時SNSなどで情報発信している。「note」に地下ラボのアカウントを作成。随時情報発信している。noteの記事は、運営事務局のほか、プロジェクトに参加した学生も執筆している。掲載した内容は、東京都下水道局の公式Twitterアカウントで拡散している。そのほか、WEBメディアやインフルエンサーなどとタイアップもしている。今後は地下ラボのHP(学生制作中)を立ち上げる予定だ。
クリエイターに教えを受け、PR動画も制作中
2019年度は、切り口を変え、東京下水道をPRする動画を制作することにした。前年同様、学生を30名程度公募し、ワークショップ、フィールドワークの後、成果物を報告する。現在、各チームごとに制作に取り掛かっているところだ。
8月に実施したワークショップでは、CMディレクターの中島信也さんを講師に招き、動画制作のノウハウを伝授した。ワークショップの1週間後に実施したフィールドワークでは、三河島水再生センターや隅田川などを回った。
10月には、講演会「特別講演 東京地下ラボPRESENTS 『クリエイティブの力で都市インフラの未来を考える』~見えないものから見えるものまで~」を開催。ライゾマティクス・アーキテクチャーの齋藤精一氏、NOSIGNER代表の太刀川英輔氏が登壇し、目に見えないインフラの可視化に関するディスカッションなどを行った。
「都市インフラの広報の仕方、見せ方に関する発言は、都職員にとっても参考になる点も多かったです。例えば、自分の施設紹介にこだわらず、ライトアップするイベントなど、その施設を活用して実施する企画を行うなど、まずは大勢の人に来てもらうことが大事であって、来ていただくことで、その施設を体感し、知っていただくことができるとおっしゃっていました。学生さんにとっても大変刺激になったようです」(同)と話す。