高齢技術者の新職種「コンストラクション・ディレクター」とは?
――雇用延長制度の概要や目的は?
村上 この制度は、建築人財が長く安心して働くことができる環境を作るとともに、熟練社員からの技能伝承による若手建築人財の育成を目的としたものです。
具体的には、まず建築人財(一級建築士、1級建築施工管理技士)の定年を65歳に延長するとともに、定年後再雇用の限度を70歳に延長しました。加えて、60歳以降の役割を明確化するため、コンストラクション・ディレクター職(CD職)を新設しました。CD職では、原則として、各種工事の専任技術者(現場所長)の業務を担ってもらう予定です。

雇用延長制度の概要 / 大京穴吹建設

コンストラクションディレクターの給与水準 / 大京穴吹建設
――60歳になると給与が大幅に下がり、技術者のモチベーションも減退するイメージがありましたが、この制度だとまだまだ頑張れる方が多いのではと感じました。
村上 当然、それを目的としています。もちろん、単純に定年を伸ばすだけでは、身体的に厳しいのではと考えており、そのために新しく「CD職」を創設しました。こちらに該当する社員は、来年度で10人ほどですが、今回、社内に周知したところ、早速、数名から問い合わせがありました。
ただし、現在も現場所長などの業務を行っている方は、それを継続するわけですから、65歳定年のメリットがありますが、資格を保有してはいるものの、既に現場から離れている方にとっての「CD職」の在り方については、本社の関係部署含めて定めていく必要があります。
ちなみに、外部からいらっしゃるのも大歓迎です。60歳を迎えられても、巡回チェック、安全パトロールなど担っていただきたい仕事はたくさんありますから。
一方、新築工事では40~50戸のコンパクトマンションの受注を強化しており、今後年間工事高100億円を目指し、新築部門を成長分野としているため、ここでも人財ニーズがあります。
――これからの建設需要の見通しについては。
村上 マンション管理組合の方は労務費が高騰していると一部誤解されていますが、それは新築に限っての話です。改修工事は、東京五輪との需給バランスの影響を受けにくいと考えています。改修工事と新築工事では、材工の比率や職人が違いますからね。協力会社にヒアリングも行い、改修工事の職人の確保はできています。
オリンピック後は、新築から改修へ、職人が移行してくる期待もあります。しかし労務費は長期的には上がっていくため、生産性の向上が課題です。
改修工事では”4週6休”をほぼ達成
――「働き方改革法案」が順次施行されている中、御社の取り組みも注目されていますね。
村上 当社では、20 時になるとパソコンが強制的にシャットダウンし、月の残業が20時間を超えると上司と本人に警告が表示されます。こうした取り組みもあり、月平均の残業時間は 24 時間となっています(2019年3月期実績)。また、年間所定休日数は131日で、労働環境はかなり整ってきていると感じています。
――休日の確保に重点を置いた働き方改革ですね。
村上 当社のベースは不動産業にあるので、休日は業界他社よりも多いと思いますよ。また、手掛けている工事の約8割は既存マンションの改修工事ですが、改修工事は住みながらの工事のため、土日は工事をしないほうが好まれるのです。そのため、休日も設定しやすいです。
当社では年間に約40名をキャリア採用していますが、入社後のヒアリングやアンケートでは、「休みが取りやすくなりました」「残業時間が減りました」という回答が多かったです。
改修工事では、今のところ4週8休をにらみつつ、4週6休をほぼ達成しています。一方、新築工事は競合他社との競争やお施主様の意向もあり、4週5休と6休が混在しています。。
――建設業界でも女性が働きやすい職場をアピールしていますが、何か取り組まれていますか?
村上 ユニフォームを女性向けに変更したり、女性向けのトイレの設置、温水洗浄便座の標準装備などを実施しました。また、以前はフルハーネス安全帯も女性向けのものがなく、カッコ悪いとの声もあったため、女性が着けても安全かつ違和感のないフルハーネス安全帯を導入するなど、段階的に女性活躍の取り組みを推進しています。
――ほかに、独自の取組みはありますか?
村上 「コミュニケーション費用」として、社員一人あたり毎月3,000円を支給しはじめたところ、社員からの評判は良いです。
当社の業務は、グループの管理会社である大京アステージや大京コミュニティと連携しながら進めることが必須で、全国の拠点でもフロアやスペースを共有しています。社員間のコミュニケーションがとても重要です。なので、コミュニケーション費用を利用しての社内イベントや飲み会などを開催して積極的に交流してもらいたいです。